援護率不足に泣いてきた巨人菅野、今季は両リーグ10勝一番乗り

7月21日、巨人の菅野智之が両リーグに先駆けて10勝目を挙げた。菅野は今年のWBCでも活躍するなどNPBを代表する先発投手だが、デビュー以来、毎年勝ち星を減らしてきた。これに初めて歯止めがかかった。

巨人・菅野智之【写真:Getty Images】

入団後は明らかな進化を見せるも、勝ち星が伴わなかった菅野

 7月21日、巨人の菅野智之が両リーグに先駆けて10勝目を挙げた。菅野は今年のWBCでも活躍するなどNPBを代表する先発投手だが、デビュー以来、毎年勝ち星を減らしてきた。これに初めて歯止めがかかった。

 菅野は防御率の推移を見れば、進化していることが明らかだったが、投球内容に勝ち星が伴わない状況が続いていた。援護率に恵まれなかったのだ。

 菅野の各年の勝敗、防御率と援護率は以下の通り。()はリーグ順位。

2013年 13勝6敗 防御率3.12(6) 援護率3.96(8)
2014年 12勝5敗 防御率2.33(1) 援護率3.65(11)
2015年 10勝11敗 防御率1.91(2) 援護率3.11(13)
2016年 9勝6敗 防御率2.01(1) 援護率2.88(12)
2017年 10勝4敗 防御率2.05(1) 援護率3.48(8)

 菅野の防御率は向上し、2年目以降はリーグトップクラスになったが、これに反比例して援護率は下がり続けた。2015年は規定投球回数以上の14人中13位。2016年はついに最下位となった。

 近年の巨人は貧打にあえいでいる。チーム打率は2013年こそ1位だったが、2014年5位、2015年6位、2016年3位、そして今年は5位だ。援護が少なかった。

 しかし、同じ巨人でも2016年の田口の援護率は3.89(8)、2015年のマイコラスは4.41(3)、2014年の杉内は5.09(3)だった。なぜか菅野が投げた時だけ、援護率がずっと低かった。だから投球内容は進歩しているにも関わらず、勝ち星が減り続けたのだ。

まだ高いとは言えない菅野の援護率

 今年、その傾向に歯止めがかかったが、それでも菅野の援護率は高いとは言えない。

 今季、セの規定投球回数以上の勝敗、防御率と援護率は以下の通り。援護率順。

秋山拓巳(神) 8勝4敗 防御率3.22 援護率6.14
大瀬良大地(広)6勝0敗 防御率3.07 援護率6.09
岡田明丈(広) 7勝4敗 防御率3.54 援護率5.35
メッセンジャー(神)9勝5敗 防御率2.89 援護率4.58
井納翔一(De) 4勝4敗 防御率3.41 援護率4.21
野村祐輔(広) 5勝4敗 防御率2.60 援護率3.82
マイコラス(巨) 8勝4敗 防御率2.63 援護率3.77
菅野智之(巨) 10勝4敗 防御率2.05 援護率3.48
今永昇太(De) 6勝5敗 防御率2.85 援護率3.45
田口麗斗(巨) 8勝2敗 防御率2.12 援護率3.30
バルデス(中) 6勝5敗 防御率3.00 援護率3.29
ブキャナン(ヤ) 5勝7敗 防御率3.66 援護率3.05
石川雅規(ヤ) 4勝10敗 防御率5.09 援護率1.86

 打線が圧倒的に強い広島の投手が援護点に恵まれていることがわかる。巨人の投手は援護点が少ない中、僅差の試合をものにして勝ち星を稼いでいる。

 セイバーメトリクスでは勝利数は重要な指標とはされない。それは投手の力量だけでなく、味方打線の援護点に影響される部分が大きいからだ。

 菅野はようやく実力に見合った勝ち星を得たということになろう。今季の菅野はあと10~11試合登板機会があると思われる。キャリアハイの13勝が当面の目標になるだろうが、どこまで勝ち星を積み上げるだろうか?(広尾晃 / Koh Hiroo)

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