めっきり減った投手の本塁打、現役では13人、今季は外国人投手3人のみ

7月23日のヤクルト戦で、阪神のメッセンジャーは8回無失点の快投で10勝目を挙げたが、打席でも3回に右中間に先制本塁打を放った。これが決勝弾となったが、メッセンジャーにとってはNPB初本塁打だった。

DeNAのジョー・ウィーランド【写真:Getty Images】

今季投手による本塁打はバルデスとウィーランド、メッセンジャーのみ

 7月23日のヤクルト戦で、阪神のメッセンジャーは8回無失点の快投で10勝目を挙げたが、打席でも3回に右中間に先制本塁打を放った。これが決勝弾となったが、メッセンジャーにとってはNPB初本塁打だった。

 メッセンジャーはメジャーでもマイナーでも本塁打を打ったことはなく、プロ初本塁打でもあった。今季NPBでは、投手による本塁打は中日のバルデスが4月1日の巨人戦、DeNAのウィーランドが5月17日の広島戦で打ったのに続いて3本目だった。

 かつて「打撃自慢の投手」はどのチームにもいたが、最近はめっきり減っている。「二刀流」の大谷翔平は、投手の選手登録で通算42本塁打を打っているが、投手で出場した際の本塁打は、2016年7月3日のソフトバンク戦に「DH解除」で打席に立った際の1本だけ。現役で本塁打を打ったことのある投手は、それを含めて13人しかいない。

○広島
野村祐輔 1本(2013年)

○巨人
山口俊 2本(2014、16年、いずれもDeNA時代)
マイコラス 1本(2016年)

○DeNA
ウィーランド 1本(2017年)

○阪神
能見篤史 1本(2013年)
藤浪晋太郎 1本(2014年)
メッセンジャー 1本(2017年)

○ヤクルト
館山昌平 2本(2010、15年)
小川泰弘 2本(2015、16年)

○中日
バルデス 2本(2016、17年)

○日本ハム
大谷翔平 1本(2016年)

○ソフトバンク
松坂大輔 1本(2006年、西武時代)
大隣憲治 1本(2008年)

 全員が先発投手。しかし。シーズン2本以上を打った投手はいない。投手でシーズンに2本塁打以上したのは、2009年の広島に在籍したコルビー・ルイスの3本まで、さかのぼらなくてはならない。

かつては多かった「強打の投手」、投手の通算本塁打数5傑は…

 プロ野球で活躍するような投手は、高校時代は「エースで4番」だった選手が多い。打撃も得意だったはずだ。しかし、プロに入ると打撃をあきらめるケースが多い。

 かつて、プロ野球には「強打の投手」がたくさんいた。投手の通算本塁打数5傑(投手として出場時に限定)と通算勝利数を見てみよう。

36本 金田正一 400勝
33本 米田哲也 350勝
31本 別所毅彦 310勝
25本 平松政次 201勝
21本 堀内恒夫 203勝
(金田正一はこれ以外に代打で1本打っている)

 投手のシーズン本塁打記録は、1950年に巨人の藤本英雄が打った7本(200勝)だ。昔の大投手は打撃でもチームに貢献したのだ。

 桑田真澄氏は著書で「今の投手コーチの中には、投手に体力を温存するため打席で”バットを振るな”と指示する人がいるようだが、2回や3回の打席でバットを振るスタミナもないようでは、いい投球はできない」と書いている。桑田氏も通算7本塁打を記録している。

 DH制があるパ・リーグはともかく、投手も打席に立つセ・リーグでは投手も打者だ。チャンスでは殊勲打を打って勝利をつかみ取ってほしいものだ。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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