浮世絵を観光資源に 先祖の再評価へ調査

 江戸末期から明治期の浮世絵師で、開港間もない横浜を数多く描いた2代目歌川国輝(くにてる)(1830〜74年)。その子孫の高校生が、作品や人となりについての調査を進めている。先祖の再評価に加え、観光の振興に生かせないか、試行錯誤している。

 ■萩小田さん歌川国輝子孫の高校生 国輝について調べているのは、桐蔭学園高3年の萩小田(はぎおだ)悠人(ゆうじん)さん(17)=横浜市旭区。7月上旬、祖父で国輝のひ孫にあたる廣男さん(92)=千葉県船橋市=と国輝作品を所蔵する県立図書館(横浜市西区)を訪ねた。

 同館が所蔵する「横濱佛國(ふつこく)役舘(やくかん)之全圖(ぜんず)」など、開港後の横浜を描いた3点を閲覧。「想像で描いているんじゃないか」「波の表現がすごい」。じっくり眺めながら、作品の特徴を読み取った。

 悠人さんが国輝に興味を持ったのは高校1年生のとき。自宅にあった浮世絵の画集を見たことがきっかけだった。国輝の絵が縁で、2015年に富岡製糸場(群馬県)の世界遺産登録1周年記念事業に廣男さんが招かれたことなどもあり、「自分の祖先を調べてみたい」と取り組み始めた。

 現在は、同館や県立歴史博物館(同市中区)、県外の施設が所蔵する作品を見たり、学芸員に話を聞いたりしている。「遠近感の表現がうまい。作品を見て、風景画が得意なのではないかと思った。もう少し長生きしていたら、もっと有名になっていたのでは」と悠人さんは話す。

 調査するうちに、「浮世絵という文化財が埋もれていることも気になった」という。国輝をはじめ多くの浮世絵が公共施設などに所蔵されているが、実際に見られる機会は多くはない。観光に関する勉強をしていることもあり、「所蔵されている浮世絵で、文化財に関心のある欧米からの観光客を増やすことはできないか」と考えを広げている。

 廣男さんは親から国輝の話を繰り返し聞いており、自身も関心を持って調べた時期があった。自宅には国輝の位牌(いはい)もある。「国輝がもっと知られてほしいという私の気持ちも代弁してくれている」と孫の奔走に目を細める。

 調査した内容は、この夏にもリポートとしてまとめる。インターネット上で公開することも視野に入れている。悠人さんは「まとめた資料は富岡製糸場にも送りたい。これを機に国輝の絵を広めることができたら」と意気込んでいる。

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