【トップインタビュー 大紀アルミニウム工業所・山本隆章社長】東南アで先行の強み生かす ダイキャスト事業を強化

――通期の連結業績予想は売上高が前期比13・7%増の1714億円、経常利益が同12・5%増の52億7千万円。第1四半期(4~6月期)の状況は?

大紀アルミニウム工業所・山本社長

 「4~6月連結業績は計画通りで順調だ。今期の計画は昨年に比べて意欲的なものを作ったが、自動車需要の堅調により国内のアルミ需要は落ち込まないだろうし、海外も比較的安定した状態。通期連結業績は、何とか達成できるとみている。足元は原料と製品の価格について適正なスプレッド(マージン)が確保できており、悪くはない状態だ。しかし、いつまでもこの良い状態が続くとは限らない」

 「成長するマーケットが必ずしも良いとは限らないと考えている。例えば中国とアメリカ、両市場において合金メーカーは期待過剰ゆえに生産能力を過大に持ち、原料高の製品安に陥っている。材料と購買の両面で過当競争を繰り広げ、値幅が縮小している。北米最大の二次合金メーカー、リアル・アロイは昨年100億円強の赤字を計上したと聞く。その内60億円は評価損としても、その後も赤字基調で厳しい状況が続いているようだ。こういう会社が1社あれば、業界の皆に迷惑をかけることになる。当社はデルタアルミ(肇慶市大正アルミ、中国広東省のアルミ二次合金メーカーで大紀が出資)製品を中心に日本市場に導入しているが、これが無ければ安定した国内販売のスプレッドは確保できないと思える。米国出張から戻ったばかりだが、今回の収穫は『価格スプレッドは傷つきやすい』と痛感したことだ」

――中国の環境規制については?

 「環境規制に関しては、国全体ですごく真面目に取り組んでいる。『上有政策、下有対策』というお国柄と思っていたが、杓子定規ではと思うほどの徹底ぶり。被覆線、モーター、雑屑は規制の対象になりつつある。ゾルバ(ミックスメタル)はそこまでではないが、税関での異物混入の受け入れ判断は厳しくなってきている」

 「先程の成長マーケットの弊害ではないが、3~4年前に実施された『年産5万トン以下のアルミ二次合金メーカーへの統制導入』では、それを嫌い、皆さん能力を増強し5万トン以上の会社になった。日本から中国の業界実態を見れば。過当競争に追いやられた非常に厳しい状況にある。例えば日本での溶湯はメーカーと需要家が話し合い細部まで詰めて導入しているが、中国では右も左も溶湯。溶湯での提供は当たり前で、特別なものではなくなっている。中国のアルミ合金業界は新塊メーカーが半国営で資本力がある半面、二次合金メーカーは民間企業が主体でそれが乏しい。二次合金は運転資金に相当金がかかるが、その面でも厳しい」

――海外拠点の状況は?

 「アジアの拠点はすべてフル操業の状態で、非常に忙しい。ダイキアルミ・インドネシアは総額20億円強を投じ第2溶解工場を建設中。今年12月の竣工後には、ピーク時の月産4700トンが倍増する見込み(月産能力1万2千トン)。ダイキアルミ・タイは第1・第2工場ともフル生産でデルタなどグループ商品塊を加えて月販売量として1万トン以上を維持している。ダイキオーエムアルミ・フィリピンは月産700トン、ダイキアルミ・マレーシアは月産2500トンと、いずれも目いっぱいだ。インドネシアの拠点からタイ、フィリピン、ベトナムに製品を供給するケースが多い。国内5工場(亀山・滋賀・新城・結城・白河)は日本の全需要家をカバーしているが。同様の状況になってきた」

 「東南アジアはこの2~3年、経済成長が鈍化し、中国勢を含む地場の二次合金メーカーは設備投資を見送った。一方、我々は地道にやってきた。これからいろいろな会社が伸び代のある東南アジアに殺到するだろうが、東南アジア市場で先行している当社は迎え撃つ立場だ。加えて各国で懸念されている不法投棄の社会問題では、いろいろな意味合いからもダイキが良き見本となりたい」

――新規の設備投資案件は?

 「国内関係会社・聖心製作所(滋賀県)のダイキャスト事業に2年間で7億円を投じる。収益面でこれまで劣等生だったが、800トンDCマシン、加工機30台を増設し企業力を付ける。海外はダイキアルミ・タイに投資をするし、マレーシアのダイキアルミニウムマレーシアにはダライ粉乾燥設備を新規導入した」

――「ダイキイズム」継承のためには?

 「各拠点間でのシナジー効果を発揮させるなど、より積極的に形態を変えていこうと思っている。例えば東南アジア内でのQC大会開催。『ウィンウィンプロジェクト』と呼んでいるが、ともに英語圏のフィリピンとマレーシアの両拠点は、5Sに取り組んでいく。活性化や成長に向け、積極的に実行していきたい」(白木 毅俊)

© 株式会社鉄鋼新聞社