今や最もファイターズらしい選手に― 日ハム大田「泥臭くというのは大事」

日本ハムの大田泰示外野手が26日のロッテ戦(帯広)で逆転勝ちの突破口を開いた。

日本ハム・大田泰示【写真:石川加奈子】

「泰示にかけた」―栗山監督の期待に応えた日ハム大田

 日本ハムの大田泰示外野手が26日のロッテ戦(帯広)で逆転勝ちの突破口を開いた。

 1点を勝ち越された直後の7回無死一塁の場面。「自分の持ち味を存分に出すには、怖がらずに思い切って行くこと」と自分に言い聞かせて打席に立った。ロッテ・唐川の初球の直球を右中間へ。二、三塁と好機を広げて、矢野の逆転打につなげた。チームは4-2で勝利した。

 併殺打の可能性も考えながら最終的に「泰示にかけた」と話した栗山監督。「覚悟してやってくれた。どういう風に打ったら一番確率がいいのか考えて。姿は本当にいい」と勝利の立役者として名前を挙げた。

 7月6日西武戦の走塁中に左ふくらはぎがつって途中交代した後、左足の不安から代打での出場が続いた。13試合ぶりにスタメン復帰したのは前日25日のロッテ戦。その試合でも一塁へのヘッドスライディングでもぎとった内野安打を含めて2安打と完封負けの中で気を吐いていた。

 足の不安はもうない。この日二塁打を放った後、矢野の左前打で二塁から激走して逆転のホームを陥れた。

「トレードしてきて、監督の信頼を得られるように頑張らないといけない。一生懸命やっている姿をファンにも届けたいし、これからも泥臭くというのは大事」と大田は当たり前のようにサラリと言った。今や最もファイターズらしい選手。そのガムシャラな姿勢が、球団移転後通算1000勝目の記念の白星を呼び込んだ。

本塁打数に加えて安打数も過去8年を上回る勢い

 今季の開幕は故障で出遅れ、1軍昇格後しばらく打率が2割を下回っていたが、辛抱強く起用し続けた栗山監督の期待に応え、4月29日の楽天戦で待望の移籍後初本塁打を放つ。その試合から6試合連続で安打を記録するなど徐々に調子を上げていき、新天地でついにスタメンの座を手中に収めた。

 大田は、その後も随所で印象的な活躍を披露する。5月12日の千葉ロッテ戦では、かつての本拠地・東京ドームで、プロ初となる1試合2本塁打を記録。1番に入った6月10日の巨人戦では、古巣相手にプロ入り後2度目となる初回先頭打者本塁打を放った。前半戦の時点で、過去8年の通算本塁打数を上回るシーズン10本塁打に到達。安打数もすでに60本と、こちらも今季1年のみで昨年までの8年間の合計を上回りかねない勢いだ。

 ヘッドスライディングで内野安打をもぎ取る気迫溢れるプレーや、誠実な人柄が窺えるヒーローインタビューなどで、首脳陣のみならずファンの心も着実につかんでいる。まだまだ大田のプロ生活は続くが、周囲の高い期待に応え切れなかった“巨人の大田”は、もはや過去のものとなりつつある。ここからまたさらに調子を上げ、キャリアハイのシーズンをさらに素晴らしいものとしていけるか。まだまだその可能性は未知数な、“北海道日本ハムの大田”の挑戦はこれからも続いていく。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

© 株式会社Creative2