侍ジャパンU-12代表、仁志監督に采配悩ませる「球数」と「日程」の難しさ

台湾・台南市で行われている「第4回 WBSC U-12ワールドカップ」。悲願の世界一を目指す侍ジャパンU-12代表は29日、オープニングラウンド第2戦のメキシコ戦を戦った。前回準優勝の開催国チャイニーズ・タイペイ、日本とともにグループAの3強と見られているメキシコとの一戦は、大接戦の末に5-6の僅差で敗れた。

侍ジャパンU-12代表の仁志敏久監督【写真:Getty Images】

1勝1敗でグループA最大の敵、チャイニーズ・タイペイと対戦

 台湾・台南市で行われている「第4回 WBSC U-12ワールドカップ」。悲願の世界一を目指す侍ジャパンU-12代表は29日、オープニングラウンド第2戦のメキシコ戦を戦った。前回準優勝の開催国チャイニーズ・タイペイ、日本とともにグループAの3強と見られているメキシコとの一戦は、大接戦の末に5-6の僅差で敗れた。

侍ジャパンU-12代表、必勝体制で迎える大一番はチャイニーズ・タイペイ戦(侍ジャパン応援特設サイトへ)

 試合後、仁志敏久監督は「今日と明日をワンセットで考えないといけないところが、難しかったですね。大事にいって、継投がワンテンポ遅れてしまった。投手の球数がすごく関係してくるので、そこで大事にいきすぎちゃったかな、と思いますね」と悔しそうに語った。この敗戦の裏側には、オープニングラウンドで侍ジャパンU-12代表が乗り越えなければならない難しさが隠れていた。

 その難しさとは、国際大会特有の「球数制限」と「日程」にある。

 今大会は子供たちの肘、肩の怪我の防止のために「球数制限」が設定されている。1日の球数が30球までは連投が可能だが、31球以上となった場合は、翌日の登板は規定により出来なくなる。46~60球であれば、2日間休ませねばならず、61球から75球なら3日間と定められている。20球→11球などの連投で30球を超えた場合にも1日登板出来なくなるなど、細かく規定されている。

 このメキシコ戦。仁志監督は、球数を睨みながらの戦いを強いられた。翌日にはグループAで最大の敵と目されるチャイニーズ・タイペイ戦が控えていたから、だ。タイペイ戦での登板を想定している投手には30球以上投げさせることは出来ない。ただ、目の前の試合展開次第で、投手起用にも細心の注意を配らねばならない。指揮官は、その狭間にいた。

メキシコではチャイニーズ・タイペイ戦の起用も考えながら継投

 メキシコ戦での先発は大山陽生(広島安佐ボーイズ)。メキシコ打線を無安打無失点に抑える好投を見せていたものの、球数が26球に達したため、2回1死一塁の場面で南澤佑音(大東畷ボーイズ)にスイッチ。南澤は3回に2つの四球などで1死一、三塁とされ、メキシコの3番ティラドに3ランを浴びたところで球数は23球。ここで3番手の加藤達哉(武蔵府中リトル)へ交代となった。

 3回1死からの登板となった加藤逹は、28日のチェコ戦からの連投。前日は22球を投げていたため、実質3連投は出来ない。60球以内の2日の休みも考慮した上で2イニング33球を投げたが、5回につかまった。「加藤達哉のコントロールに賭けて、1個でもアウトを取ってくれたらな、と思ったんですけど、あそこが限界だったのかなと思いますね」と仁志監督。四球、死球、死球で1死満塁とされ、メキシコの4番モンハラスに勝ち越しの中前2点適時打を浴びた。

 ここにもこの大会の継投の難しさがあった。加藤達の後ろには、山口滉起(大阪東リトル)が控えていた。加藤達が適時打を浴びる前でのスイッチも可能だったが、ここにも「球数」の難しさがあった。タイペイ戦での登板を考えていた山口を早めに投入し、30球を越えれば、また継投せざるを得なくなる。翌日のことを考えれば、出来るだけ前の投手を引っ張りたかったのだ。

グループAの3強と連戦するのは日本だけ

 この「球数制限」にここまで悩まされるのは、実はグループAでは侍ジャパンU-12代表だけだと言える。日本のオープニングラウンドのスケジュールを見ると、チェコ→メキシコ→チャイニーズ・タイペイ→南アフリカ→ブラジルとなっている。

 その一方でチャイニーズ・タイペイはブラジル→南アフリカ→日本→チェコ→メキシコの順で戦う。メキシコは南アフリカ→日本→チェコ→ブラジル→チャイニーズ・タイペイとなっている。グループで3強と目される日本、チャイニーズ・タイペイ、メキシコだが、この3強の中での他2チームと連戦が組まれているのは日本だけなのである。

 チャイニーズ・タイペイとメキシコは日本戦と互いの直接対決に全戦力を集中出来る一方で、連戦となっている日本はその2試合を両睨みしながら、戦わねばならない難しさの中にあった。

 メキシコに敗れたため、これで1勝1敗となった侍ジャパンU-12代表。オープニングラウンド上位3か国が進出するスーパーラウンドでは、グループBを勝ち上がってきた3か国のみと対戦。オープニングラウンドの勝敗も加味された上で、スーパーラウンドの順位が決まる。

 侍ジャパンはメキシコに敗れたため、同じグループAの相手にこれ以上敗れると、スーパーラウンド進出が叶っても、圧倒的な劣勢を強いられることになるだけに、メキシコ戦後に仁志敏久監督は「今日負けたことで、明日は絶対に勝たないといけない」と語った。負けられない大一番。侍ジャパンU-12代表が戦うチャイニーズ・タイペイ戦は午後6時30分(日本時間同7時30分)試合開始予定だ。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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