時に試合の結果を左右する「四球」 打率だけでは測れない貢献度

7月30日、楽天は2-3で迎えた9回表2死走者なしから、オリックスの黒木を攻めて嶋、茂木の連続四球の後、聖澤が二塁打を打って逆転した。こういう形のように四球が試合の勝敗を左右するケースは多い。地味なリザルトながら、四球は野球にとって重要な要素だ。

ソフトバンク・柳田悠岐【写真:荒川祐史】

打率最下位でもチームに貢献、打者の強みとなる「選球眼」

 7月30日、楽天は2-3で迎えた9回表2死走者なしから、オリックスの黒木を攻めて嶋、茂木の連続四球の後、聖澤が二塁打を打って逆転した。こういう形のように四球が試合の勝敗を左右するケースは多い。地味なリザルトながら、四球は野球にとって重要な要素だ。

 打者が四死球を選ぶ能力を示す指標にIsoD(Isolated Discipline、出塁率-打率)がある。IsoDは.100を超えると優秀とされる。この数値を見ると、打者の意外な能力が見えてくる。

 以下はパ・リーグの規定打席以上の打者のIsoD10傑。

1柳田悠岐(ソ)0.122
2T-岡田(オ)0.113
3安達了一(オ)0.112
4中田翔(日)0.096
5秋山翔吾(西)0.093
6鈴木大地(ロ)0.088
7島内宏明(楽)0.08709
8中村剛也(西)0.08708
9デスパイネ(ソ)0.084
10メヒア(西)0.082

 柳田は昨年も.140で1位だった。長距離打者は相手投手が警戒するため四球が多くなるが、それに加えじっくりと球を見極める打撃姿勢がIsoDを高めている。

 柳田以外にもT-岡田、中田翔、秋山翔吾、中村剛也、デスパイネ、メヒアと各球団の中軸打者が多い。強打者は長打だけでなく、四死球による出塁でもチームに貢献している。

 そんな中、3位の安達了一は打率.201で最下位。本塁打はわずか1本だ。しかしIsoDは.112と優秀。出塁率は.313にもなる。打てなくても粘り強くボールを見極める安達の貢献度は低くないと言えるだろう。

山田は打率最下位もIsoDはリーグトップ

 セ・リーグはどうだろうか。

1山田哲人(ヤ)0.122
2筒香嘉智(De)0.120
3福留孝介(神)0.108
4糸井嘉男(神)0.105
5バレンティン(ヤ)0.102
6鳥谷敬(神)0.098
7エルドレッド(広)0.092
8中村悠平(ヤ)0.090
9田中広輔(広)0.089
10丸佳浩(広)0.087

 ヤクルトの山田も昨年(0.121)に続いて2年連続でIsoDが1位になっている。今季は打率最下位の.223と不振に陥っているが、各球団の山田への警戒心は強い。同時に山田は打てなくてもしぶとく四球を選ぶ姿勢を維持していると言えよう。

 セ・リーグも筒香、福留、糸井、バレンティン、エルドレッドと強打者が並んでいる。鳥谷敬は現役最多、歴代でも16位の971四球を選んでいる。選球眼の良さはこの打者の大きな強みだ。

 広島の不動の上位打線「たなきくまる」のうち、田中と丸はIsoDが高い。2番の菊池のIsoDは0.043(24位)だが、犠打は現在、リーグ最多タイの22。出塁率の高い打者とつなぐ能力に長けた打者の絶妙の組み合わせであることがわかる。

 IsoDは、普通は報じられない隠れた指標だが、この数値が高い打者を打線にうまく配することで、得点効率は良くなる。今季のペナントレースを制するチームには、必ずIsoDの高い選手が中心にいることだろう。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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