直木賞佐藤氏が佐世保で会見

 小説「月の満ち欠け」(岩波書店)で、第157回直木賞の受賞が決まった佐世保市在住の作家、佐藤正午さん(61)が1日、同市内のホテルで会見し、「うれしいというより、ほっとしている」と現在の心境を語った。

 選考会当日は、市内の行きつけの喫茶店で編集者と吉報を待ったという。「思っていたよりも待ち時間が長かった。やっときたという感じ。(電話がかかってきた)その瞬間の記憶は飛んでいる」と明かした。

 佐藤さんは1955年、同市生まれ。北海道大文学部を中退し、地元に戻り小説を執筆。83年に「永遠の1/2」で第7回すばる文学賞を受け、デビューした。「ジャンプ」や「Y」「身の上話」など多数の著書がある。

 受賞作は、生まれ変わりを題材に男女の究極の愛を描いた。今回の受賞で、初版1万2千部から約10万部増刷したという。佐藤さんは「デビュー作も今と同じくらいの部数。今後、部数が伸びると未知の世界」と笑顔を見せた。

 また、「勝手な想像ですが」と前置きし、2015年に第6回山田風太郎賞を受賞した「鳩の撃退法」に触れ、「あれで空気が変わって、(直木賞受賞の)機運が熟したのではないか」と述べた。

 受賞決定から2週間。周囲の変化について問われると、「思っていたよりも騒がれず、いつもの生活を送れている。だからこそこの街でやってこられたのかなと、いまさらながら思う」としみじみ語った。

 贈呈式は25日、東京都内で開かれる。

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