35歳月収18万。認知症の母と暮らしている実家を出たいがどうすれば…

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、「マネープランクリニック」。今回の相談者は、独立して住宅購入を考えている30代の独身男性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

住宅を購入して資金的に将来、不安はないでしょうか?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、「マネープランクリニック」。今回の相談者は、独立して住宅購入を考えている30代の独身男性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください。(相談は無料になります)

相談者

京埼さん(仮名)

男性/会社員/35歳

近畿地方/実家(持ち家・一戸建て)

家族構成

母親(70代)、弟

相談内容

数年前から今の実家近くに家を買って独立したいと考えていました。ところが当時最もしっかりしていて生計を担っていた父親が亡くなり、今は上記の通り3人暮らしで、母親の病気(軽度認知症/要介護認定1)のため、自分が主に生活費の管理等をしています。そのため完全に独立してしまうのはやや不安なのですが、やはり自分の家が欲しいという気持ちはあります。そこで、現時点でもし独立するなら今後の人生設計含めてどうなのかな?と思い相談したいのです。

家計収支データ

「京埼」さんの家計収支データ

家計収支データ補足

(1)本人が予定している一人暮らしの場合の生活費について

車両費 3万円

食費 2万5000円

電気ガス水道料金 1万5000円

通信費 5000円

趣味娯楽費 2万5000円

雑費 2万円

(持ち家にかかるコストは考慮せず)

(2)購入する家について

購入予定としている家は築30年くらいの800万円程度の物件を考えている。リフォーム費用等を加算して総額は1000万円ほど。

(※即金かローンを組むかは不明)

(3)貯蓄について

うち1000万円は父親からの相続分。母親も相続財産があるが、介護費用が多額になった場合、ここ(自分が相続した分)から捻出することになると考えている。

FP深野康彦からの3つのアドバイス

アドバイス1 購入後のランニングコストを忘れずに

アドバイス2 65歳まで働くことは老後にとって大きなプラス

アドバイス3 資金以外で親の面倒を見ていくことになる

アドバイス1 購入後のランニングコストを忘れずに

今すぐマイホームを購入した場合、その後のマネープランに問題はないか。まずは、試算してみましょう。

ご相談者の京埼さんが希望されている物件は800万円程度の中古住宅。これにリフォーム費用として200万円を考えているとのこと。さらに購入時にかかる諸費用(仲介手数料、登記費用、税金、その他引っ越し費用など)100万円とします。これでトータル1100万円。

住宅ローンを組むどうかについては、貯蓄も十分にあり、独身であることを考えれば、即金で購入しても1600万円が手元に残りますので、あえてローンを組まなくても問題はないと思います。超低金利ですが、ローンを組めば利息が発生することに変わりはありません。

ただし、ローンの支払いがなくても住宅の維持コストが発生します。まずは固定資産税。あと、マンション、一戸建てのどちらを希望されているかはわかりませんが、仮にマンションであれば管理費や修繕積立金が毎月発生します。固定資産税と合わせて月2万円程度と考えておけばいいでしょう(一戸建ての場合、将来の修繕のために同程度の積立が必要)。また、駐車場代が発生するなら別途、そのコストも見込んでおかなくてはなりません。

ともあれ、現金で住宅を購入できるというのは大きなポイントです。それも、相続はあったにせよ、自分でここまで貯めてきた努力、家計管理があったからこそ。無駄遣いをせずよく頑張ってきたと思います。

アドバイス2 65歳まで働くことは老後にとって大きなプラス

次に、実家を出て独立した場合の生活費ですが、住宅コストを除くと12万円とのこと。それに先の2万円を加算すると14万円。残業代も考慮して、平均手取り月収を19万円とすると毎月5万円の貯蓄が可能となります。さらに、ボーナスから半分貯蓄できるとすると、年間70万円。60歳までの25年間で1750万円ですから、住宅購入後の手持ち資金1600万円と合算すれば3350万円、これに退職金を加算した金額が老後資金となるわけです。

その金額が老後資金として確実に足りるとは断言できませんが、今と同程度の生活費が老後も続くとすると、おそらく公的年金(老齢厚生年金)の受給額の範囲内で生活できると考えられます。つまり、老後資金を取り崩さなくて済むことになります。

現行では原則、公的年金支給は65歳からですから、60歳で定年退職すると5年間の生活費が必要です。月14万円×5年間で840万円。これを貯蓄から差し引いても、65歳の時点で2500万円が残ることになります。

もちろん、予期せぬ大きな支出(病気、介護、自宅リフォームなど)が発生する可能性もありますが、それもこれだけ手持ち資金があれば、そう困ることはないでしょう。

また、再雇用でもアルバイトでも構いませんので、65歳まで働くことができれば、老後資金にさらに余裕ができ、安心です。加えて、収入がなく、貯蓄を取り崩すだけの生活は、計算上、足りるとはわかっていても不安になるもの。その意味でも、65歳まで働くことは老後にとって大きなプラスとなるのです。

アドバイス3 資金以外で親の面倒を見ていくことになる

最後に、気にされているであろう、お母さんの生活ですが、独立して家を出る以上、現状、京埼さんからの資金援助は不要ということになります。また、今後、介護が必要になっても、かかる費用は原則お母さんの年金や貯蓄でまかなうべき。そもそも、お母さんには2000万円相当の相続があったことになります。それがまだ残っているなら、今後、資金的に大きく困ることはないはずです。

ただ、資金とは別の部分で、生活は支えることになるでしょう。離れて暮らす分、今までのようにはいかないと思いますが、弟さんとよく話してあって、やはり半々で面倒は見ていくことになるのでは。

そうなると、購入する住宅も今の実家に近い場所が便利で、望ましいということになります。もちろん、認知症が進行すれば、専門の施設やヘルパーさんの力を借りることになりますが、子として親にできることをできる範囲でしてあげて下さい。

教えてくれたのは…… 

深野 康彦さん  

マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武

(文:あるじゃん 編集部)

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