【エクステリア産業成長への展望】〈日本エクステリア工業会・庵原岳史会長(LIXIL理事エクステリア事業部長)に聞く〉意匠性・セキュリティー向上など、リフォーム需要創造 省施工品で現場の負担軽減

 フェンスや門扉、バルコニーなど住宅の付加価値を高めるエクステリア製品はアルミニウム建材の主要分野の一つ。少子高齢化による新築関連需要の成熟化や施工現場での人手不足など、現在の業界を取り巻く環境は厳しい。その中でエクステリア産業はどう成長戦略を描くのか。この4月に日本エクステリア工業会の会長に就任した庵原岳史氏(LIXIL理事・エクステリア事業部長)に聞いた。(古瀬 唯)

――まずは就任に当たっての抱負から。

日本エクステリア工業会・庵原会長

 「業界をさらに魅力的にするとともに需要創造に取り組みたい。住宅着工は今後大幅に減少する懸念があるが、エクステリア産業は取り組み次第で成長する可能性を秘めている。これまでの20年間で住宅着工は4割ほど減ったが我々の市場規模は決して縮小していない。今後も新たな価値を創造していけば将来に期待ができる。また海外需要についても開拓の余地はあると思う」

――今後の市場についてはどのような見方を。

 「今年度は住宅全体の着工件数は若干減少するものの、我々の商材が使われる持ち家や分譲住宅の着工は前年並みとなる見通しだ。今は新築住宅での需要が最も大きく、エクステリアの市場も着工に合わせて横ばいになるだろう。ただ中長期的には確実に着工減が見込まれるほか、施工現場の職人不足が需要のボトルネックになる可能性もある。今後は新築関連の市場が減る中でリフォーム関連などの需要を創り出すほか、人手不足に対応していくことが重要になると考えている」

――需要創造に向けて重要になることは。

 「リフォーム関連需要の創造では門扉やフェンスに照明などを組み合わせ、意匠性やセキュリティーを向上させる提案などが考えられる。またガーデンルームやデッキなど庭で用いる製品については自然と触れ合うライフスタイルを広めればニーズを喚起できる。足元で言えば配送業者の人手不足が社会問題化する中で、戸建て住宅向けで宅配ボックスの需要が旺盛。今後さらに伸ばしていくには品ぞろえを増やすほか、スマートフォンとの連携など機能を充実させることが有効だろう。ここは新築関連でも期待ができるところだ。工業会としては問屋会の皆さんと連携して毎年全国で展示会を開いており、その中で専門工事業者や一般消費者の方々に我々の製品力をPRし需要創造をバックアップしている」

――施工現場の人手不足対応のためには。

 「省施工商品の開発が重要だ。工場で途中まで組み立てるユニット化やシステム化に加え、取り付けに必要な工数や人員を減らす設計の工夫がさらに求められる。また基礎工事の部分については効率化の余地が大きいので今後の課題になるだろう。一方で施工を担う人材の育成も大切。工業会のバルコニー施工技能士認定制度について認知活動に力を入れるほか、認定制度の拡充を目指していければと考えている。併せて技能士の地位向上にも取り組みたい」

――グローバルな需要にも期待を。

 「エクステリアの市場は現在日本国内がほとんどだが、海外でも門扉やフェンスなどの需要はあるはず。外国では木製や鉄製が多いので、アルミが持つさびへの強さや軽さなどを武器に市場を切り拓けるかもしれない。住宅事情や経済状況を勘案すると地域的には東南アジアに期待できる。ここでは日本企業が製造する高付加価値品を拡販できる土壌もあると思う。それぞれの会員会社がエクステリア以外で持つ海外工場を活用して製品を供給できれば販売を伸ばせる可能性は充分にあるだろう」

――高齢化や住宅省エネ化など環境変化への対応は。

 「高齢化が進む中でエクステリアには豊かで安全な生活に貢献する役割が求められる。今後はそのための提案を強めることが不可欠。例えばテラス窓にスロープとデッキを組み合わせて提案すれば車イスでも容易に家に出入りできるようになる。さらに福祉施設やサービス付高齢者向け住宅などでいっそう安心して使える専用製品を増やすことも大切だ。またユーザーの安全確保へ、高所には転落防止専門の柵を取り付けるなど適切な場所に適切な製品を使うようアナウンスすることも重要だ」

 「住宅省エネ化への対応では、住まいの一次消費エネルギー収支をプラスマイナスゼロにするZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及にどう貢献できるか工業会の中に委員会を立ち上げて議論している」

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