実はPSGもそう!「国家や自治体が所有するサッカークラブ」を知ってる?

ついにネイマールのPSG移籍が決定した。その違約金2億2200万ユーロ(およそ288.8億円)はカタールの政府系ファンドが用意したと言われ、国家が深く関わった取引となった。

世界的な人気を誇るサッカーにおいては、国家や政府、それに準ずる組織がスポーツの経営にかかわるケースは少なくない。

パリ・サンジェルマンのように、国家や自治体、あるいはサッカー協会自体が経営を行ったケースについてまとめてみよう。

パリ・サンジェルマン(フランス)

パリ・サンジェルマン カタール

もちろん今最も話題を集めているのはパリ・サンジェルマンだ。

オーナーはカタールの政府系投資ファンドであるQSI(カタール・スポーツ・インヴェストメンツ)。ネイマールの獲得資金もここから出ており、カタール国家自体が関与していることは間違いない。

会長のナースル・アル・ハライフィは、世界的放送局『BeIN Sports』(旧アルジャジーラ・スポーツ)の会長でもあり、経済的な面で他のリーグにも睨みを利かせている。

政府直轄なのに…エステグラル&ペルセポリス(イラン)

エステグラル
ペルセポリス

イランの名門チームとして知られる2つのクラブ。青いユニフォームのエステグラルと赤いカラーのペルセポリス。両者がテヘランのアザディ・スタジアムを本拠地としている。

この2つのクラブを所有しているのはイラン政府だ。正確には青年スポーツ省がオーナーを務めており、会長もサッカー協会系の人物が派遣される。

両チームはイラン国内では屈指の名門であるが、PSGとは違って経済的には特別恵まれておらず、時々給与未払い騒動を起こす。エステグラルのファンであったジャヴァド・ネクーナムは、要請に応じて欧州から加入したにもかかわらず、結局クラブと契約不履行で対立して辞めてしまった。

イランには他にも政府系、自治体系のクラブが数多く、マシーン・サジやサバ・コムは自治体所有であるし、フーラドやサイパ、パイカンなどが国有企業の傘下にある。

自治体の方が金が無い…仁川ユナイテッドなど(韓国)

韓国のサッカー界では「市民クラブ」という呼ばれ方をするが、自治体所有のチームが幾つかある。企業名や団体名がつかず『〜FC』『FC〜』となっているのはおおよそそうである。

統一教会が経営から抜けた城南一和天馬が『城南FC』に変わったのもそれに該当するケースだ。

例外はFCソウルと仁川ユナイテッド。前者はGSグループが所有しており、後者はKリーグで唯一通称にFCがつかない市民クラブである。

Kリーグ1部では上記の仁川ユナイテッド、大邱FC、江原FC、光州FCが市民クラブに該当する。また、もちろん韓国軍が所有する尚州尚武FCも忘れてはならないクラブだ。

ただ、こちらもむしろ市民クラブのほうが経済的には恵まれていないのが通常であり、POSCOや現代グループなどの財閥系には敵わない。

政府以上の存在…アサンテ・コトコ(ガーナ)

17〜19世紀にかけてガーナの1部を支配したアシャンティ王国。イギリスとの戦争で敗北したため滅亡したものの、その王家は今も残っている。

国がガーナとして独立した後もアシャンティ王の権力は非常に大きく、政府以上の存在となっている。

そのアシャンティ王、オトゥムフオ・ナナ・オセイ・トゥトゥ2世がオーナーを務めているのが、同国の名門アサンテ・コトコだ。

その補強費や人件費はアシャンティ地方の収益から出ていることが伝えられており、実質政府の強い支援を受けているクラブである。

なお、先日アサンテ・コトコはチームバスがトラックに衝突する事故を起こしたことでニュースとなった。これによってアシスタント・キットマネージャーのコフィ・アサレ氏が死去し、多くの選手やスタッフが負傷している。

手厚いサポート…ウェスタンシドニー・ワンダラーズ、ニューカッスル・ジェッツなど(オーストラリア)

ウェスタンシドニー・ワンダラーズ 小野伸二

ルールがかなり厳しいことで知られているオーストラリア・Aリーグ。比較的トップダウンで運営されている大会であり、サッカー協会の干渉が強い。

しかしその反面、クラブの創設や破産の際にはサッカー協会が主導してサポートする形を取っている。

小野伸二選手が所属していたころのウェスタンシドニーは、創設から間もない時期だった。そのため、当時のオーナーはオーストラリアサッカー協会だったのである。2014年にプリモ・グループのポール・レデラー氏が買収し、民間所有となった。

一方、チーム消滅を避けるために協会が引き継いだケースがニューカッスル・ジェッツだ。2015年に当時のオーナーであったネイザン・ティンクラーの資金が尽き、債務返済が不可能となった。

そのためサッカー協会は彼のライセンスを剥脱すると共に、クラブの経営を一時的に引き継ぎ、2015-16シーズンを戦った。その後中国系企業のLedman Groupに売却されている。

関与は否定、ホント?…マンチェスター・シティ

マンチェスター・シティ

マンチェスター・シティのオーナーはシティ・フットボール・グループであり、横浜F・マリノスもその一角を占めていることで知られている。

しかしこのグループの親会社はアブダビ・ユナイテッド・グループだ。もともとマンチェスター・シティを買収するために設立された子会社で、その裏に政府系ファンドが絡んでいると言われた。

アブダビ・ユナイテッドのトップであるシャイフ・マンスール・ビン・ザイード・アル・ナハヤンはアブダビ王室の人物で、確かに政府系ファンドの一員である。

しかし後の発表によれば、このアブダビ・ユナイテッドの経営には政府の関与は行われていないとのこと。果たしてそれは真実なのかどうか?

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