金属行人(8月9日付)

 「下期は製造コストが一段と上昇する。4月からの電極値上がりに加えて、合金鉄、耐火物、石灰、輸送費など合わせて製品1トン当たり1千円以上になりそうだ」と異形棒鋼メーカーの社長氏は厳しい表情を見せる▼製品価格の半分以上を占める鉄スクラップ価格も「例年なら盆休み明けに中だるみ価格が出てくるが、今年は高炉原料の上昇気配から鉄スクラップも連動して当分下げはない。むしろ上げ気配だ」▼スクラップ価格の上昇も副資材価格の上昇も、すべての原因は中国の鋼材市況が上昇していることが背景にある。中国は現在、インフラ整備や建築需要が拡大しており、5~6月の鉄鋼生産は過去最高ペースの6千万トン強。このため日本などが輸入している合金鉄など副資材価格も上昇中だ▼異形棒鋼メーカーは現在、地区によって異なるが当面5万5千~6万円をターゲットに価格引き上げを進めている。ただ実需が伸びていないことから上伸ペースは緩やか。「9月からは建築需要が増えてくる」との見立ても足元では揺らいでいる▼「生産は実需見合いを徹底するが、販売価格は実需見合いでなく、コスト意識・採算意識を前面に出していかなくては駄目」と営業担当にハッパを掛けている。

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