私がついていないと…献身的な女性が「ダメ男」を生み出す訳

仕事もせず、お酒やギャンブルにおぼれていく彼。彼がそう変わっていったのは、ひょっとしたらパートナーである彼女の行動に問題があるのかもしれません。

頼りがいのある彼が変わってしまったのはなぜ?

出会ったころには男っぽくて頼りがいがあり、バリバリ働いていた彼。それなのに、つきあいだしてからは仕事を辞め、求職活動もせずに家でゴロゴロする日々。昼間からお酒を飲み、気晴らしにパチンコに行けばお金を浪費してしまう。彼は決まって「そのうちちゃんとするから」と言うけれど、本当に信じていいのだろうかと心配になってしまう……。

なぜか、つきあう男性が決まってこのようなパターンになるなら、彼女であるあなた自身が、彼の行動を助長させているのかもしれません。

働き者で頼りがいのある彼があっさりと仕事を辞め、酒やギャンブルにおぼれていったのはなぜでしょう? それは、彼がその状況を許され、甘え続けられる環境を得られたからです。このように、身近な人の依存や問題行動を許し、助長させることを「イネイブリング」といい、それを行う人を「イネイブラー」と言います。

甘えを許しすぎた彼女のイネイブリング

「イネイブリング」を行う女性には、ある行動の特徴があります。先ほどの架空の事例で考えると……。・「仕事がつらい」と言う彼に同情し、「当面は私が稼ぐから大丈夫」と彼の生活の面倒を見ることを約束してしまう

・求職活動をしない彼に文句を言うも、まじめに取り合ってくれないので、いつしか真剣に怒ることもなくなっている

・「お酒やパチンコをやめて」と言っているのに聞いてくれないので、結局は彼のわがままが通っている

・彼からお金が必要だと言われるので、渋々ながらも渡している

・家事をやってくれないので、結局自分一人でやっている

彼女は、無意識のうちにこんな行動をしているのではないかと想像します。実は、このように心配や愛情、優しさから生まれた行動が、パートナーの依存や問題行動を助長させる「イネイブリング」になってしまうのです。

彼女には、自分が彼を破滅の道に誘導しているなど、思いもよらないことだと思います。しかし実質的に、彼が働かないことを容認していることで、彼は「この人と一緒にいれば、もう俺は頑張らなくてもいい」と思い込んでいるのかもしれません。文句を言い続けても飲酒やギャンブルを許していることで、彼は「結局、最後には自由にさせてくれる」と勘違いしているのかもしれません。

このように、相手を思ってやっていることが、実は本人のためになっていないことも多いのです。

彼に依存され、彼女の生活はどう変わったの?

そんな彼との生活を続けていくうちに、彼女はどう変わってしまうのでしょう?

彼のぶんまで生活費を稼ぎ、毎日が仕事漬け。お金に余裕がないので、生活の潤いや自分磨きに、まったくお金をかけられない。時間や気持ちの余裕もないので、友達と食事に行く気にもなれない。ヘトヘトで帰ってきても、家事は山積みのまま。毎日のように、彼のこと、生活のこと、将来のことで悩み、気持ちが晴れない……。いつしか、このようにつらく苦しい生活に変わっているのではないでしょうか?

困ったときに支えあい、二馬力で苦労を乗り越えていくのがパートナーシップであるはず。自分でできることを一方に任せきり、自分で背負える荷物を一方だけに背負わせてしまったら、いつかその人は倒れてしまいます。

彼女に会うまでは、「男らしい働き者」という印象だった彼。彼が鎧を脱いだのは、それまで虚勢で生きてきた彼に、彼女がやすらぎを与え、弱い部分を許し、受け止めてくれたからでしょう。とはいえ、傷を受け止めて癒すことと、甘えを許し続けることは違います。際限なく許しすぎることが、相手の自立を壊してしまうことにもなるのです。

彼を変えるために必要なこととは?

では、彼女はこれから先、どうしたらいいのでしょうか?

今の関係と生活に限界を感じるなら、自分自身の行動を振り返ることです。「彼を助けるため」と思ってやってきたことが、実は彼の依存をエスカレートさせる原因になっていたのかもしれない、と気づくこと。つまり、イネイブリングへの気づきが必要です。

そして、できないこと、したくないことをはっきりさせることも必要です。「私は、あなたの求職中の生活を支えることはできる。でも、働く気のないあなたを食べさせていくことはできない」「あなたのわがままは、これ以上受け止められない。そのまま続けたいなら、一緒には暮らせない」というように、自分の気持ちをはっきりさせ、それを相手にも伝えることです。

一見、冷たいように思えるかもしれませんが、自分の気持ちを明確にし、相手にも伝えることが大切なけじめになるのです。そして、伝えたことは必ず実行すること。「彼がかわいそう」「彼だってつらい」と同情し、わがままを許していたら、元の木阿弥です。別れること、離れて暮らすことも覚悟して、きっぱりと伝えなければなりません。

堕落していく彼をいくら非難しても、その本人が「変わりたい」と本気で感じなければ、意味がないのです。つまり、依存や問題行動から生活を建て直すには、本人が本気で自立を考える必要があります。

そして、自立にはそれにふさわしい環境が必要です。わがままが許され、いつでも手を差し伸べられる環境にいては、本気で変わる気にはなれません。甘えと依存の関係に一線を引くことは、愛情と覚悟があればこそできる行動です。

(文:大美賀 直子)

© 株式会社オールアバウト