浦賀、復員の苦労とは 引き揚げ船の歴史展示

 ◆16日まで横須賀・継承戦後72年の夏 戦後、56万人以上が引き揚げた横須賀・浦賀港の歴史に光を当てた展示会「戦後史の空白! 浦賀港引揚船展」が大津コミュニティセンター(横須賀市大津町)で開かれている。船内でコレラが流行して、故郷を目前に復員兵が亡くなった「コレラ船の悲劇」など、戦後の混乱期を継ぐ写真や手記など約400点が並び、平和の尊さを伝えている。大津観光協会の主催。16日まで。

 浦賀港は中国大陸や南方地域の復員兵らが帰国する指定港で、引き揚げ者数は東日本で最多だった。1946年には、コレラの感染者を乗せた船が相次いで入港。伝染を防ぐため、検査が終わるまで上陸が禁止され、数十隻が海上で停泊を余儀なくされた。

 展示会では、船内で手当てを受けるやせ細ったコレラ患者の写真や、祖国の土を踏まずに亡くなった友人に思いを寄せた復員兵の証言集などが並ぶ。

 当時の新聞記事は、停泊していた数十隻の船舶を「海上にコレラ都市」と表現。人口約10万人だった横須賀市に対して、「忽然(こつぜん)と誕生した人口十万以上の中都市を賄う力は今の神奈川県にはない」などと書かれ、動乱の時代を物語る。

 引き揚げ者が生じた経緯を知ってもらおうと、真珠湾攻撃を報じた米国の新聞記事や、日本の降伏文書の英語と日本語のコピーなども展示されている。

 展示会を企画した市民グループ「横須賀Cアカデミー」は「戦争ではいろいろな問題が起きることを若い人たちに知ってもらい、これからの平和を考えてもらえれば」と話している。

 午前10時〜午後4時。問い合わせは、大津観光協会電話046(836)3531。

© 株式会社神奈川新聞社