ダルビッシュvsバースが実現したら…レジェンド達が対戦したい現役選手は?

今年は8月7日に東京ドームで開催された「サントリードリームマッチ」。このイベントでは毎年、様々な名シーンが再現される。日本球界を支えて来た選手たち。今でこそ体型などの変化こそあれど(失礼…)打撃、投球フォームはあの時のままだ。そんな名選手たちは引退した今でも、自らがフィールド上にいる現役選手たちと同じような気持ちでいる。

元阪神のランディ・バース氏【写真:山岡則夫】

一番人気は大谷翔平? 中畑氏は「打てる訳ないじゃん」

 今年は8月7日に東京ドームで開催された「サントリードリームマッチ」。このイベントでは毎年、様々な名シーンが再現される。日本球界を支えて来た選手たち。今でこそ体型などの変化こそあれど(失礼…)打撃、投球フォームはあの時のままだ。そんな名選手たちは引退した今でも、自らがフィールド上にいる現役選手たちと同じような気持ちでいる。

 現場でテレビで、現役選手の活躍を目の当たりにするたびに「俺だったらこう攻めるのに…」。ミスを犯すたびに「何やってんだ、ああすれば防げたのに…」と自らをオーバーラップさせる。「この選手とぜひ対戦してみたい」。そう思う選手も多いという。

 やはり一番人気は、大谷翔平(ファイターズ)である。

「165キロだよ。そんな球速なんて見たことない。僕らが現役時代はそんな球速を出せる打撃マシンもまだなかったから、体感することすらできなかった。今の選手は大変だよ、あんなの打たないといけないから(笑)。逃げ出しちゃうんじゃないかな」

「ストレートだけなら、まだ何とかバットに当たるかもしれない。でも彼の場合はすべての球種が一流だからね。対戦した打者に聞いてみると、フォークなんて消えるって言うんだもん。打てる訳ないじゃん」

 元巨人・中畑清氏(*1)は笑いながらも、まんざら冗談ではなさそうだった。

 興味深かったのは荒木大輔氏(元ヤクルト*2)。

「僕はやっぱり投手出身だから、まずは打者・大谷を見てしまう。打席に立つたびに、『どうやったら打ち取れるのか?』を考えているけどわからない。よく言われることだけど、『スイングしないだろう…』と思っていたら、いきなりバットが出て来て打ち返すようなイメージ。スイングスピードが飛び抜けて速いから可能なんだろうね。抑えるのは、やっぱり難しいですよ」

「それに、おこがましいけど打席にも立ってみたい。やっぱり野球人としてどんな球を投げるのか感じてみたい。ナンバーワンのストレートに変化球。あれだけの強打者を抑える秘密を自分の目で、最も近い場所で見てみたいという気持ちがある」

 投手としての興味か野球人としての意地か。

バース氏はダルビッシュとの対戦熱望「打てないだろうけど、何度かやればね…(笑)」

 長年、東京ドームを本拠地としてきた元巨人・水野雄仁氏(*3)は実感を込めて語る。

「特にここ(=東京ドーム)では難しい。球場の形状もあって逆方向への打球がスタンドインしやすい。僕自身も現役時代、『打ち取った…』と思った打球が入ったことが何回もあったから」

「普通の、というか普段、力のない打者でもこすったような感じで入ることがある。それが大谷ですからね。彼は完璧に打ち返した時はもちろん、逆方向へもしっかり打ちますから」

 元カープ・大野豊氏(*4)は、大谷に加えて、もう1人の打者の名前を挙げる。

「大谷や柳田(悠岐・ホークス)なんか球場の広さはまったく関係ない。大谷なんて京セラドームでセンターの一番上まで飛ばしてしまうんだから。それだけの飛距離に加えて、逆方向へ柔らかく打ち返す技術も持っている。長打だけでなく、打率も高い理由がよくわかる」

「『左対左は圧倒的に投手有利』と昔から言われて来た。でもこの2人に関してはそういうのはまったく当てはまらない。どこに投げても打たれる感じがする。強いて言えば、本人に打ち損じてもらうしかないかな(笑)」

 数々の修羅場をくぐり抜けて来た大野氏をしてここまで言わせる。まさに球場に足を運んで一見の価値がある、「お金の取れる選手」だ。「試合ももちろん、打撃練習もスゴいので注目ですよ」。最後に大野氏は付け加えてくれた。

 野茂英雄氏がドジャースで旋風を巻き起こしてから20年。数多くの名投手たちが海を渡り、成績を残して来た。「日本人投手のレベルは世界トップクラス」とまで言われるようになった。名打者たちからすると、そんな投手たちとの対戦はぜひ経験してみたいのだろう。

 まずダルビッシュ有(ドジャース)の名前が上がった。

「やはりメジャーというのは大変な場所、そこで結果を出しているのは本当、尊敬する。決してチーム力が整っていた訳ではないレンジャーズであれだけの評価を受けた。そのうえでドジャース移籍。彼にとって優勝できるチャンスが大きくなって本当に良かった」

「ダルビッシュのカーブは今やアメリカで“魔球”のような扱いを受けている。球速を落として大きく曲がる。わかっていてもお手上げのボールなんだ。困った時に絶対に頼れるボールをもっている。それに彼はメンタルが本当に強い。そういう投手とやってみたい。打てないだろうけど、何度かやればね…(笑)」

“Mr.三冠王”元阪神のランディ・バース氏(*5)はアメリカでもその動向に注目している。

中村紀洋氏は千賀との対戦を希望「真っ向勝負をしたくなる」

 また、元広島・野村謙二郎氏(*6)には意外な縁があった。

「ダルビッシュから打ったのが現役最後のホームラン(06年6月15日の札幌ドーム)。試合は大差がついていたんだけど、うれしかったなぁ。当時はまだ若手投手だったけど、『モノが違う』ということは当時からわかっていたから。それが現役最後のホームラン、忘れられないよね」

「今、メジャーでバリバリやっていて、『今の成長した彼ともう一回、対戦してみたいな』と思う時がある。まぁ、あの時みたいには打てないと思うけど…(笑)。あの時よりも格段に進歩しているし、今や世界一を争うチームのエースですからね」

 日本人投手にも期待度が高い選手は多い。「サムライジャパン」でも欠かせない戦力となった右腕・千賀洸大(ホークス)だ。

「投手らしい投手ですよね。ストレートと消えるような“魔球”のようなフォーク。わかっていても打てないタイプの投手。だからこそこういう投手と真っ向勝負をしたくなるんですよ」とは元近鉄・中村紀洋氏(*7)だ。

「熱くなるんですよね。松坂大輔(ホークス)とやっていた頃を思い出す。対戦しているうちにムキになって行く自分がわかる。なかなかこういう対戦ってないですからね。もちろんチームのために打つのが一番だけど、それとともに本当に楽しかった。千賀君とは僕の現役晩年に何度か対戦経験もあると思うけど、その時と今とは比べ物にならないですから」

 引退していくつになっても「野球バカ」。現役選手を見ながら、「この選手と対戦したら…」と想像することも多いそうだ。

「夢でもし会えたら…」

 いや現実ならもっと素敵なことだ。そう思わせてくれるからこそ、野球って最高なのだ。「もう一度やりたい」と本人たちが思い、「何度も見たい」とファンたちが思う。そんな対戦が心からいとおしい。

*1:中畑清(元巨人)
右投右打。NPB通算1248試合出場、4838打数1294安打、171本塁打、621打点。

*2:荒木大輔(元ヤクルト、横浜)
右投右打。NPB通算180試合登板、39勝49敗2セーブ、防御率4.80。

*3:水野雄仁(元巨人)
右投右打。NPB通算265試合登板、39勝29敗17セーブ、防御率3.10。

*4:大野豊(元広島)
左投左打。NPB通算707試合登板、148勝100敗138セーブ、防御率2.90。

*5:ランディ・バース(元阪神)
右投左打。NPB通算614試合出場、2208打数743安打、202本塁打、486打点。三冠王2回(85、86)

*6:野村謙二郎(元広島)
右投両打。NPB通算1927試合出場、7095打数2020安打、169本塁打、765打点、250盗塁。

*7:中村紀洋(元近鉄、オリックス、中日、楽天、横浜)
右投右打。NPB通算2267試合出場、7890打数2101安打、404本塁打、1348打点。(山岡則夫 / Norio Yamaoka)

山岡則夫 プロフィール
 1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページ(http://www.ballparktime.com)にて取材日記を定期的に更新中。

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