H形鋼、関東市況に上伸機運 メーカー値上げを転嫁

ときわ会在庫、最低水準

 今春以降に上値の重さが意識されてきた関東地区のH形鋼市況に、再び上伸要因が顕在化してきた。メーカーが再生産可能なマージン確保を狙う追加値上げに踏み切ったことに加え、流通の在庫水準も過去3年間で最低水準まで縮小している。商社や流通は建築需要が本格化するのに合わせて唱え値を上げる見通し。足元の市場価格はベースサイズでトン7万5千~6千円だが、今後は7万円台後半が照準に据えられそうだ。

7万円台後半視野に

 東京地区の市場価格は7万5千~6千円。4~6月は実需の薄さから流通各社が需要見合いの仕入れ姿勢を継続したため、広幅品などで歯抜けサイズも散見されるなど在庫規模は低下した。

 新日鉄住金の建材製品を扱う商社・特約店などでつくる「東京ときわ会」の7月末在庫は前月比2・0%減の3万2400トンと、直近3年間では最少となった。

 供給面では新日鉄住金が8月契約分の店売り向け販売価格を前月比で2千円上げとし、鉄スクラップ市況の急騰などから電炉各社も追随する流れが濃厚だ。市中を介さないメーカー直送の物件価格も先行して上昇しており、目先は東京製鉄の9月契約販価が注視されそうだ。

 需要面でも東京五輪・パラリンピック関連施設や大型の再開発案件、物流倉庫などの出件が旺盛だ。国土交通省は9月の主要建設資材需要見通しで、形鋼が2・6%増の36万トンに上ると予測する。

 需給のタイト化を見越し、商社や流通業者は仕入れ値上昇分の販価転嫁を企図。「中小物件向けの出庫が伸びてきた。まずは唱え値を2千~3千円上げて遅れていた採算改善を狙う」(流通幹部)構えだ。

 ただ人手不足により工期遅れなどが常態化していることから「鋼材需要の伸びは限定的で、市況の上げピッチもメーカーの出荷価格上昇ペースより緩やかになる」(扱い筋)とみる向きもある。盆休み明け後には正念場を迎えそうだ。

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