中国のアルミ板メーカー、飲料用缶材増産を加速 新興メーカーが設備増強、数年内に供給過剰も

 中国のアルミ板メーカーが飲料用缶材の増産体制に入っている。中国国内の需要増加を取り込むべく、地場大手や新興メーカーがこれまでに増強してきた新設備が稼働を始めている。相次ぐ能力増強によって、数年後には供給能力が中国の需要量を上回る見通しにあり、あふれた缶材が日本や東南アジアへ向かう可能性が高まっている。

 中国の缶材マーケットでは、数年前までは最大手の南山アルミ業やチャイナルコ系の西南アルミ業といった現地系メーカーの合計出荷量が5割超のシェアを占め、残る4割を日系や欧米系メーカーなどが供給していた。しかしながら直近では宏橋集団や中国忠旺集団、河南中孚実業などの新興アルミ圧延メーカーが相次いで板圧延へ本格参入。缶蓋などの品質は日系メーカーなどに及ばないものの、コスト面に優れる中国勢が中国市場の海外材(日系・欧米系)を圧倒している。

 中国のアルミ缶材市場の見通しについて、UACJは14年に年64万トンだった需要量が20年には9割増の120万トンへ拡大すると予測。約40万トンの日本市場を大きく上回る数量が今後創出される計算で、缶材を手掛ける各社がこのマーケットへの取り組みを積極化している。

 中国忠旺HDの板圧延子会社である天津忠旺アルミ業は16年に熱延1号ラインが稼働を始め、今年末までに熱延2号ラインが本格稼働する見通しにある。熱延2号ラインは缶材専用ラインと位置付けられており「(公称の)年産能力は80万トン。本格稼働する来年に向けて現在は中国の製缶メーカーにサンプルを供給している」(天津忠旺の製造担当者)状況だ。また河南中孚実業も「今年の缶材販売計画は10万トン強。来年は倍増を目指している」(河南中孚技術センター総経理)と強気の計画を組む。

 中国市場では品質などの問題を度外視すれば、20年までには缶材の供給量(生産能力)が需要量を上回るとの見方が強まっている。中国系メーカーも将来的な需給バランスの悪化は織り込んでいる様子で「タイミングを見て中国国外での販売も強化していく。ターゲットは豪州や東南アジア。日本にも売りたい」(天津忠旺)という。

 一部の中国大手メーカーは日本の製缶メーカーへも缶材のサンプル出荷を進めているとの観測も出ているが、「品質要求の高い日本市場は参入障壁が高くターゲットになりにくい」(日系圧延メーカー)とされる。

 一方で東南アジアなどは日本ほど品質要求が高くないほか、距離的な優位性もあり中国勢がすでに存在感を高めている。今後、中国市場の需給バランスが崩れれば東南アジアなどの市場に中国材が流出する可能性は高い。そうなった場合には、同地域で缶材を販売する日系圧延メーカーの営業戦略にも影響を与えそうだ。

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