産業技術総合研究所、小型の加速器中性子施設を設置 鋼板の微細組織を高度解析

 産業技術総合研究所は、つくばセンター(茨城県つくば市)に小型の加速器中性子施設を設置すると発表した。鋼板を中心に金属材料の微細組織をより高度に解析するための研究などに役立てる狙いで、2019年度の運用を目指す。

 自動車など輸送機器の抜本的な軽量化を目指す新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「革新的新構造材料等研究開発」(14~22年度)の一環。産総研が主体となって加速器中性子施設を構築するが、新日鉄住金、JFEスチール、神戸製鋼所、日産アークの4社も協力する。

 中性子線は、透過能力が高いため、材料を壊さずに内部の微細組織の情報を得ることができる。今回設置するのは中性子線を利用する小型の分析施設で、例えば鉄鋼材料の場合、実際に部材として用いられるセンチメートル単位の厚さの試料を分析できる見込み。国内には大規模な中性子施設もあるが、利用者数が年々増えていることもあり、利便性の高い比較的小規模な中性子分析装置のニーズが高まっている。

 産総研の同施設は全長約10メートルの電子加速器と中性子発生部、中性子計測用ビームラインなどで構成し、国内の他の小規模中性子施設にないコンセプトとなる「ブラッグエッジイメージング法」という分析手法を用いる。同手法では中性子線のエネルギーごとに材料の透過強度を検出し、画像化して捉える。構造材料の結晶サイズや結晶構造のひずみ、結晶配向などの材料内の分布を視覚的に分析できる。

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