【新社長インタビュー】〈日軽エムシーアルミ・朝来野修一氏〉合金開発・海外展開加速 汎用合金も競争力強化

――抱負から伺いたい。

 「足元の業績は順調だが、これはアルミ地金市況など外部要因によるものが大きい。外部要因が変化したとしても安定的に利益を出せる筋肉質な会社を目指していく。具体的には〝人財〟のブラッシュアップが必要だと感じている。成果にこだわるのはもちろんだが、〝その結果を踏まえ、次はどうするのか〟という意識を社員に強く求めていく」

日軽エムシーアルミ・朝来野社長

――日軽エムシーアルミ(NMA)は発足から今年4月で10年が経ちました。見えてきた課題は。

 「当社の強みは、日本軽金属が持つ〝合金開発力〟と三菱商事の〝グローバル展開力〟の二つで、これは今後もうまく活用して成長につなげていきたい。一方で得意の開発合金に重点を置き過ぎて、製造技術への意識が欠けていた部分もある。製造技術は、汎用合金を造る技術基盤がなければ向上しない。開発合金の一本足ではなく、汎用合金についても価格競争力を意識して取り組んでいきたい」

――開発合金ではどのようなニーズを取り込んでいくか。

 「自動車や電機・電子分野で求められる機能を追求していきたい。耐熱・耐磨耗合金や耐靭性合金は自動車部材としてニーズが高まっている。電機・電子向けでは、スマートフォンの筐体部分などに光輝性アルマイト合金や熱伝導性に優れた合金が使用されている。すでに開発合金「DX19」が中国のスマートフォンに採用されている。こうした自動車以外の分野への展開も狙っていく」

――足元の事業環境はいかがですか?

 「国内需要は自動車需要が悪くないので堅調を維持している。ただ円高基調が続くとなれば、輸入塊が増えてスプレッドが取りづらくなる可能性はある」

 「海外は全般に好調な生産が続いている。米国は、昨年から独ラインフェルデン社の開発合金のライセンス販売がスタートした。今年の生産量は若干減るものの、現地で拡大する自動車軽量化需要を背景に高水準な生産が続く見通しだ。メキシコは米国の通商政策が懸念材料ではあるが、顧客からの引き合いは強い。設備増強に向けて隣接地を購入したので、今後はインゴットや溶湯能力の増強に向けて取り組んでいきたい」

 「中国ではNMAの開発合金は電気・電子分野へ、独ラインフェルデンの合金は自動車向けに注力している。中国市場は拡大スピードが鈍化しているものの、当社は開発合金に特化しているのでフル生産が続いている。タイは第2工場の立ち上げが順調に推移しており、すでにフル稼働状態になりつつある。今後は品種構成を変えていきながら収益力を上げていきたい。インドは自動車生産の伸びに比例して合金需要が旺盛。取引先が増強投資に動いていることもあり、出荷は今後も伸びていくものとみている」

――設備投資の予定は。

 「国内は維持更新関係が中心となる。ただ耐震補強のため幸田工場の事務所をリニューアルする予定。今後も工場建屋更新は順次実施していく」

 「米国は自動車軽量化に向けて需要が増えていく方向にある。特にラインフェルデン社の開発合金需要も足回り部材向けは引き合いが強まる可能性が高いため、炉の拡張を視野に入れていきたい。メキシコも需要がかなりあると見ているので、早期の設備増強を実現したい」

――〝チーム日軽金〟としてどのような取り組みを考えているか。

 「日軽金のメタル・素形材事業部との連携はすでに実施している。開発合金は汎用合金と違って使う側にも技術力が必要。海外ではまだ使いこなすための技術が足りないユーザーもいるので、日軽松尾などとも連携してサポートしている。また開発合金の販売だけでなく、素形材事業部門が中心となり部品として販売するような取り組みは今後加速させたい」(遊佐 鉄平)

プロフィール

 最初の配属先は蒲原製造所の電解工場で、その後はアルミニウム線材やマレーシアの合金子会社に出向。マレーシアでは30代で社長を務めた。07年の日軽エムシーアルミ発足に尽力し、新会社では主に営業と海外統括を担当してきた。信条は「謙虚な心を常に持つ」。休日は自宅でBBQをするのが楽しみの一つ。

略歴

 朝来野 修一氏(あさくの・しゅういち)1988年(昭63)千葉工業大学工学部金属工学科卒、日本軽金属入社。2001年アマルガメイテッド・アルミニウム・アンド・アロイズ社長、07年日軽エムシーアルミ栃木工場長、13年執行役員、16年常務執行役員を経て17年6月に現職。1964年10月31日生まれ、52歳、千葉県出身。

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