守っても凄い、ホークス中村晃 「いぶし銀の職人」が放つ存在感

守っても凄い。ソフトバンクにとって欠かすことの出来ない存在だ。中村晃外野手。柳田や松田といった派手さはないが、素晴らしい働きをする。それを存分に感じさせるプレーがあった。

ソフトバンク・中村晃【写真:荒川祐史】

中村晃がチームの窮地救う圧巻送球、サファテも感謝「晃に助けられた」

 守っても凄い。ソフトバンクにとって欠かすことの出来ない存在だ。中村晃外野手。柳田や松田といった派手さはないが、素晴らしい働きをする。それを存分に感じさせるプレーがあった。

 16日のオリックス戦(ヤフオクD)。いぶし銀の職人が、チームの窮地を救った。1点リードで迎えた9回。守護神のサファテがつかまった。先頭の吉田正に四球を与え、犠打で1死二塁。ここで中島が放った打球は遊撃・今宮の後方への小フライに。懸命に今宮は腕を伸ばしたが、わずかに及ばず、中村晃の前にポトリと落ちた。

 二塁走者の代走・安達は一気に本塁を狙う。打球を拾った中村晃は素早く本塁へと送球。ノーバウンドで捕手の高谷のミットに収まり、間一髪のところで判定はアウト。少し逸れれば、同点となる場面での完璧な送球だった。工藤公康監督は「素晴らしかった。ちょっと逸れたらセーフ。ストライクを投げたのが、勝ちに繋がった」と称賛し、3年連続40セーブを達成したサファテも「晃に助けられた」と感謝した。

 窮地を脱したビッグプレー。その瞬間、中村晃は何を思っていたのか。

「勝負にいっているので、高さは気をつけて。キャッチャーの止められるところに投げられれば、チャンスはあるかなと。無心で投げました。考える暇がなかったのが良かった」

工藤監督が語る「彼の凄いところ」とは

 細心の注意を払ったのが、送球の高さ。ただ思い切り投げるわけではない。少しでも上に逸れれば、タッチが遅れる。「無心」だったとはいうものの、最低限気をつけるべきことを遂行した結果の好返球だった。

 この日の送球だけではない。決して目立つわけではないが、守備範囲の広さや、球際の強さ、そして走者を先の塁へと進めないソツのないプレーといった中村晃の守備は幾度となくチームを救ってきている。

 工藤監督は言う。「言い方は悪いけど、目立っている(選手という)わけじゃない。ただ、守備位置や送球、慌てないでやるべきことをやっている。早ければいいというわけじゃない。落ち着いて投げられるかが大事。それが出来るのが、彼の凄いところ」と。

 ここ最近、打線が湿りがちで、接戦をモノにする展開が続く。「(投手陣には)申し訳ないですけど……。点差をつけた状況に出来るのがいいんですけど……」と、責任を口にした中村晃。守備について「投手が一生懸命投げている。投げて、打たれたボールを少しでも多く捕ってあげたいという気持ちはあります」と言う。

 10本も、20本もホームランを打つわけではない。だが、この男のような「縁の下の力持ち」が、チームには絶対に必要だ。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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