【変遷を遂げる富士鉄鋼センター・業容拡大→機能集約】現場力増進、生産性向上へ ハード・ソフト両面で強化策

 富士鉄鋼センターが、当時の新日本製鉄(現新日鉄住金)の君津製鉄所構内に事業拠点を構えたのが2003年(平成15)8月。抜本的な工場再編を目的に千葉・美浜地区(新湊)から全面移転した。

需要最盛期に第2工場開設

 建設バブルがはじけ、橋梁や建築鉄骨需要がピークアウトする中で物件あたりの規模も小さくなり、切板加工についてもそれまでのロットのまとまった直線切板の大量生産から細かい異形切板の小ロット多品種・短納期生産比率が漸増。

小切りヤードと工程統合するフレームプレーナー

 こうした需要構造そのものの変化に伴う切板注文構成の変化に工場体質を変えていくためには、全面移転によって設備の仕様や配置、構内のモノの流れをゼロから再構築する必要性があった。

 移転した工場(約9600平方メートル)は君津・厚板ミルと地続きで接しており、材料搬入に要する横もちが掛からず、製鉄所との一貫生産体制を実現。加工設備にはNC機能を搭載し、しかも受注量の「山谷」に対して生産弾力性を確保でき、小ロット多品種加工にも適したレーザ、プラズマを主体に最適レイアウトを整えた。

 リーマンショック前の需要繁忙期には、親会社とも連携し金型材の切断にも着手。君津製鉄所構内に「第2工場」(賃借)を開設し、大型バンドソー2台を設置して厚物金型材の条切りを手掛けるとともに、スペース(約3300平方メートル)にも恵まれていたことから、第2工場を二次加工や置場としても活用した。

青柳鋼材と事業統合

 リーマンショック後の世界同時不況と東日本大震災を経た建材内需低迷期には、新日鉄(当時)の地区厚板溶断事業強化を目的とする最適な生産・稼働体制の構築とコスト競争力強化に向け、同じ新日鉄系列だった青柳鋼材興業との溶断事業統合・一体運営を果たす。

 一時は君津、船橋(旧青柳)の工場2拠点体制だったが、長引く需要不振によって切板受注量が増えず、拠点分散化によるデメリットが企業採算悪化にも影響を及ぼしたことから、一昨年1月末までに君津に完全集約。

 君津第2工場についても、金型需要の海外移転などの構造変化に合わせて加工能力を段階的に落としてきたが、設備売却とともに昨年1月に完全退去した。

 君津移転、第2工場開設と閉鎖、船橋との併行操業と集約…といった変遷を遂げ、現在の「君津一本化」に至っている。

 この過程で、君津での限られた敷地内で生産効率を最大限とするために受注内容を見極め、君津内製とグループ会社を含む外注委託とを選別した。

 さらには二次加工のなかでも人手を要したり場所を取ったりする内容については適材適所を考慮した上で設備の一部を外注委託先に移設(売却)。その一方で自動化によって昼夜の連続スケジュール操業可能な加工は、内製化を促進している。

フレームプレーナー撤去跡地を有効活用

 置場については、第2工場閉鎖によってスペースが縮小した分をカバーするため、新日鉄住金・君津厚板ミルの一部を倉庫ヤードとして賃借している。

 こうした一連の流れの中に、今回のプラズマ1台体制・定盤拡張やフレームプレーナーの移設・小切りヤードとの工程統合がある。これらによって構内にさらなる置場スペースを創出できるほか、二次加工能力強化や工場要員の効率配置などにつなげ、建材需要の本格回復とあわせて現場力の増進、顧客サービスの向上を見込む。

「経営マネジメント」で人材能力開発

 同社ではこれらハード面での実践と併行し、2年ほど前からソフト面での「業務改善・人材育成」にも戦略的に取り組んでいる。

 「工場の生産性を高めるには、事業に携わる全ての『人』の労働生産性と労働意欲を引き上げ、1人ひとりの〝持てる力〟を最大限に向上させることだ」とし(1)信用・信頼を大切に(2)社会に役立つ製品・サービス提供(3)技術の創造と革新に挑戦(4)自ら変革・進歩を目指す(5)人を育て生かす―という企業理念の実現に向け「業務のマネジメント」と「人のマネジメント」と称した独自の経営マネジメント手法を体系化した。

 「業務のマネジメント」では、年度末に設定する次年度の全社目標および部門別目標・個人別目標を踏まえて予算計画を策定。この策定に関しては総務系や営業系、現業系、情報処理や工程管理系など職能別に会社が求める業務レベルに対して個人の「自己評価」と「上司評価」を双方で確認面談して決める。

 これら年度予算計画と設定目標の達成に向けては「目標管理制度」で定めた独自の「実行推進サイクル」を回す。「人のマネジメント」でも同じく人材育成方針に基づき人材育成・能力開発を推進する。

 双方のマネジメントに共通する「実行面」「OJT/OFFJT」については各職場単位のQCサークルや部署・委員会による「小集団活動」によって現場レベルの底上げ・活性化を促す。これらによって創出した成果を、同社規程による「人事評価制度」(評価項目については社員にオープン化)に照らして適正評価し、個々人の潜在能力を引き出し、永続的な士気高揚につなげていく。

 まだ緒についたばかりだが、地道なチャレンジによって今年度の経営方針に掲げた「収益力」「品質・納期・信頼」そして「働き甲斐」ともにナンバーワンのシャー企業を、全社一丸で目指す。(太田 一郎)

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