【検証17年度下期の国内建材市場】〈(2)条鋼建材〉鉄骨、首都圏向け増加/鉄筋、S造シフトに警戒感

 国土交通省は7月に公表した主要建設資材の2017年度需要見通しで、普通鋼鋼材(建設向け受注量)について前年度比4・9%増の2150万トンと2年連続のプラスを見込んでいる。このうち鉄骨造(S造)向けが主体の形鋼は4・8%増の490万トン、鉄筋コンクリート造(RC造)向けの小形棒鋼(建設向け出荷量)も4・1%増の750万トンとそれぞれ上伸すると判断した。

 同省が前年度を上回る根拠として示すのは17年度の建設投資見通し(名目値)だ。全体では前年度比4・7%増とみており、うち建築部門は3・5%増、土木部門も6・3%増とのプラス予想を踏まえた判断という。

鉄骨ファブ

 首都圏の高層ビルや郊外の物流倉庫など、S造の建築物件の担い手となるのが鉄骨ファブリケーターだ。鉄構事業を手掛ける商社や大手ファブなどによると、主に首都圏業者の仕事の山積みは、最上位のSグレードが「1年後の来年6~7月までフル稼働し、その後は端境期でやや低下」(商社幹部)。Hグレードは「足元は半年前より山は高い。ゼネコンからの引き合いが増加傾向にあるので下期は高稼働で推移する」(同)とされる。

 年明けからは仕事量に濃淡も出そうだが、一方で「来年7~9月期に高層ビルの建て方が集中しているので、引受先の確保が大変」(別の商社幹部)との指摘もある。

 中小規模の案件が主体のMグレード以下でも、足元の仕事量は上伸基調にある。長期案件が主体のS・Hグレードと違い、短期の手配もあるため先々の見通しは難しいが「工期遅れなどでHグレードで案件が重なれば、外注などの需要も発生する」(同)と期待されている。

 流通関係者は「着工床面積2千平方メートル未満の中小建築物向けの鉄骨需要量は、6月まで12カ月連続で前年を上回った。Mグレード以下の鉄骨ファブの山積みにもようやく反映されてきた」として、店売り市場の荷動き、引き合いへの波及効果を期待する。だが一部では「市中取引を介さないメーカー直送の物件対応が中小規模に食い込んでいるので、特約店クラスでは需要増をまだ肌では感じられないのではないか」(扱い筋)と慎重に捉える向きもある。

鉄筋施工・加工

 マンションや病院、文教施設で採用されやすいRC造を手掛けるのが鉄筋施工業だ。2年前には新国立競技場の設計が見直されたことで鉄筋工の需給環境が軟化。首都圏では民間でも着工延期などが相次ぎ、人余りで契約単価もジリ安基調が続いていた。

 だが7月には労働需給が一変。東京都鉄筋工事業協同組合(東鉄協、理事長・館岡正一矢島鉄筋工業会長)の労務状況調査でも、必要とされる鉄筋工の総数は前回5月より763人多い5381人に膨らみ、前回はゼロだった不足人員も155人(ただし過剰も34人)まで増加した。

 契約単価の最頻値もRC造は横ばいだが、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は5月比で2千円方上伸。9月以降の現場稼働率の平均値も9月は94%、11月は95%と上昇が見込まれている。

 商社・流通からメーカーへの明細投入量(推定値)も伸びを示す。関東では7月は前年同月比2・3倍の30万9千トンに拡大し、8月も「前月には及ばないが、市況急伸を映して20万トン前後となるのでは」(商社幹部)と前年同月の15万9千トンを超えるとみられている。

 ただし業界では「人手不足が注目されると、RC造から現場作業が少ないS造への設計変更の流れが加速する恐れがある」といった警戒感も根強い。実際にRC造が多かった公共建築や商業施設でも、労務費が低く工期も短いS造を採用する例が増えている。

 一方で建設現場の省人化・工期短縮の要望に応える動きも出ている。戸建て住宅や小型店舗の基礎向けに、工場で部材を先組みする住宅基礎鉄筋メーカーの出荷量は上伸基調にある。複数のメーカーが工場新設や新工法開発に乗り出すなど内製化が進みつつあり、鉄筋工不足を補いながら建設用小形棒鋼の需要を下支えする可能性が高まりつつあるようだ。

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