東京製鉄、9月販価全面上げ H形鋼、実行ベース3000円

建値で板類2000円、異形棒3000円

 東京製鉄は21日、9月契約の販売価格でH形鋼と縞H形鋼、I形鋼、溝形鋼を実行ベースで前月比トン3千円引き上げると発表した。販売価格表の建値は据え置くが、市況の下落局面で生じた実際の販価と建値との乖離を実行ベースの値上げで修正する。また、9月契約販価は建値ベースでホットコイルなど鋼板類と角形鋼管、U形鋼矢板を前月比2千円、異形棒鋼を同3千円引き上げた。主原料の鉄スクラップなどコスト高が顕在化する中、国内外の需要は堅調。市況も強基調のため「値上げ環境が整った」(今村清志常務営業本部長)と判断した。実行ベースを含め、全品種での値上げは今年2月契約以来7カ月ぶり。

需要堅調「値上げ環境整う」

 9月契約の主な新販価(ベースサイズ)は、ホットコイルがトン6万4千円、熱延鋼板(カットシート)が同6万9千円、厚板が同7万2千円、角形鋼管(トウテツコラム)が同7万4千円、異形棒鋼が同5万9千円など。H形鋼の建値はトン7万8千円と前月比で据え置きだが、実行販価を建値レベルに切り上げる。H形鋼などの販価を実行ベースで引き上げたのは2013年8月契約以来4年1カ月ぶり。

 今回9月契約での上げ幅は、ホットコイルなど鋼板類のトン2千円に対し、H形鋼や異形棒鋼など条鋼類は同3千円だった。中小物件を含めて建築需要が堅調なため「国内需給は条鋼類の方がやや強い。このため多少の値差をつけた」(同)と説明。ただ「値上げは今回が終わりではない」(同)とし、原料や海外市況、為替などの変動を加味した上で「来月は今回と違う値幅での販価引き上げが考えられる」(同)と追加値上げを示唆した。

 鉄スクラップ価格に関しては「製品に比べ、上げのスピードが速い。上げのピッチは少し緩む気がする」(同)と指摘したが、足元は依然先高観が根強いとした。電極や耐火レンガなどの資材は下期の価格を交渉中だが「前期比で約3割のコスト高は覚悟せざるを得ない」(同)と述べた。

 足元の輸出商談はホットコイルがFOB530~550ドル、H形鋼が同570~590ドルで、ともに前月比20ドル高。依然上昇基調にある。中国の輸出減を背景に海外からの引き合いは強まっており「価格は毎日のように上がっている。アジアだけでなく世界中から引き合いがあるが、生産能力の制約もあって選別受注している」(同)とした。

 8月生産量は19万5千トンを予定。うちH形鋼が9万5千トン、ホットコイルが7万トン(輸出は1万トン)、厚板が1万トンを見込む。

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