【新所長インタビュー】〈JFEスチール・知多製造所・三宅亮一常務〉エネ分野の影響少ない収益体制へ 安全対策、近隣住民との交流重視

――足元の操業状況は。エネルギー分野の需要は回復基調にあるようだが。

 「マーケットはまだ厳しいが、北米を中心に油井管(OCTG)の需要は回復基調にある。エネルギー分野の不調をコラムや杭など国内向けの土木・建材分野でカバーしてきたのが直近1~2年の特徴だ。油井管が好調だった時期は輸出比率が6割を占めていたが、足元は4割ほど。主力のエネルギー分野ではオイルメジャーとの関係強化、国内では土木・建築向け拡販などで、エネルギー開発動向に左右されにくい安定した収益体制の構築が知多製造所の大きな課題の一つだ」

 「前期の生産数量は45万トンで、うち継目無(シームレス)鋼管23万トン、電縫鋼管22万トン。今期は50万トン強くらい行けると思う」

JFEスチール知多製造所・三宅常務

――知多製造所の主力製品・需要分野別の生産動向について。

 「継目無鋼管分野では、13クロムや耐サワー鋼など当社が得意とする分野の油井管は回復基調。引き続き、クロム系とハイカーボン材でコスト競争力の向上と高付加価値を追求していく。油井管の特殊ねじ継手では、メジャー向けでライオンやタイガーなど新種の採用も増加傾向。建材向けのカクホットも、少しずつ数量が伸びている」

 「電縫鋼管では溶接部の品質保証という観点から、高靱性マイティーシームへの関心が高い。継目無鋼管やUOE鋼管の代替品としてPRしていく。当製造所の26インチ電縫鋼管ミルは、世界最大外径・最大肉厚の製造が可能な高強度・高剛性ミル。油井のライザーやコンダクターケーシングのほか、鋼管杭分野などラインアップを拡充。拡販に結びつけている」

――今後の製造設備でのテコ入れ、投資の予定は。

 「(1)顧客ニーズ対応(2)合理化(3)老朽化更新―という3つの基本戦略は変わらない。高度化する顧客の仕様に合わせて、新技術を使った製造・検査設備などは随時行っていく」

 「昨年、油井管ケーシングサイズ(中径)のねじ切り設備を導入。これまで外注していた最大14インチまでのねじ切り加工を自社で行えるようになり、コスト競争力が向上。数量も順調に増えてきている。直近では高精度探傷ラインも設置した」

――海外ミル・加工業との連携を進める上で知多製造所の担う役割とは。

 「特殊ねじ継手については、ライセンス供与による拡販が基本戦略。ただ、開発や高級鋼の製造拠点は知多製造所であり続ける。海外でのライセンス供与先への操業指導などは、基本的に知多でノウハウを培ったスタッフが行う。海外で製造面の技術指導や品質保証・安全管理の支援ができる人材育成は当所の使命だ。現在、将来のことも考えて若手を中心に世界各地に駐在員を派遣している」

――安全対策や近隣住民との交流にも積極的に取り組まれている。

 「残念ながら今年4月に所内で重大災害を出してしまった。安全最優先の、現場の第一線までの浸透が不十分であったと猛省。『知多製造所の安全ビジョン』を作成し、新しい安全文化を形成するために動き始めた。(1)明るく話しやすい職場(2)妥協しない改善(3)誠実なルール順守―をキーワードに対話を重視。危険作業箇所や設備の改善、新技術を使った安全投資などを進めていく」

 「近隣住民との共存共生は知多製造所にとっても重要なテーマの一つ。地元の人々と交流できるさまざまなイベントを企画・運営している。所内では『さらに地元の人に喜んでもらえる工夫をするように』と宿題を出しているところだ」

――JFEスチールにおける知多製造所の役割とは。

 「鋼管の生産・研究開発の最前線拠点としての位置づけはもちろんある。その他知多製造所では鋳造ロールも製造しているので東西上工程ミルに競争力のあるロールを提供する使命がある。また、中京地区におけるコイルなどのデリバリー基地的機能も一部構内で担っている。鋼管を中心に、国内外グループ会社も含めた最適生産体制の構築に貢献していく方針だ」(後藤 隆博)

略歴

 三宅 亮一氏(みやけ・りょういち)86年大阪大学基礎工学部卒業後、川崎製鉄(現JFEスチール)入社。知多製造所では98年から現在まで、JFEスチール発足後も含めて製造畑を中心に歩む。製造部長、企画部長を経て今年4月から現職。61年10月23日生まれ、岡山県出身。

© 株式会社鉄鋼新聞社