【新社長インタビュー】〈中部鋼鈑・重松久美男氏〉研究開発強化、上級品種拡大 産学連携で「電炉製品の優位性」研究

――足元の事業環境をどう見るか。

 「建産機などの需要を中心に全体的に好調。今年度後半からは、五輪関連の需要も出てくると思う。しかし、少し長いレンジで見ると、内需は縮小していく。当社は2050年に創業100周年となるが、その時期には人口減少もさらに目立ってくると思われ、世界の鉄鋼生産マップも変化しているだろう。こうした時代の変化に対応し、原点志向で基盤強化に取り組む必要があると思っている」

――今年度の業績動向については。

中部鋼鈑・重松社長

 「1Q(4~6月期)は、販売量が前年度を上回り、販売単価も上昇した。鉄スクラップ価格も、直近は値上がりしているが、1Qは当初予想を下回ったことから、収益的には前年同期比で改善した。こうした状況が続けば、今年度の通期業績も前年度を上回ることになりそう。予断は許さないが、客観情勢をよく見極めて対応していきたい」

――現行の中期経営計画(今年度を最終とする3カ年の「15中期計画」)の最終年度となるが。

 「販売量は、当初計画の達成は難しい。現状では、前年度比6%増程度と見ている。来年度からの新中期策定に向けた活動も終盤に入っている」

――新中期計画のポイントは。

 「基本的には、現行中期のアウトラインを変えずに行きたいと思っている。連結事業基盤の強化、顧客対応力の強化・拡大、サブコア事業の伸長と新規開拓、組織活力の向上・人財の育成などが引き続き課題となるだろう」

――収益拡大に向けての検討課題は。

 「現在、当社の販売品種の主力はSS400。当社オリジナル商品や上級品種などの比率拡大により構成比を変えていくこともポイントになる」

 「営業面では、主体的なマーケット開拓に取り組みたい。販売網の拡充やきめ細かな対応を心掛けたい」

――商品開発などにも力を入れることに。

 「商品開発は重要な課題で、電炉製品の優位性を産学連携して研究するほか、研究開発費もこれまで以上に投入していくつもりだ」

――生産コスト低減への取り組みは。

 「もちろん、行っていく。当社はこれまで、生産設備の更新・改善には継続的に取り組んできた。こうした中、足元のエネルギーコストは前期比で2割程度上昇する見込み。省エネ投資などが必要になりそう」

――人材育成などで考えていることは。

 「業務上必要な資格の取得を促進するために、管理職への昇格要件として、資格取得を取り入れた。モチベーションアップにもつながると思う」

 「また、最近は現場にきちんと足を運ばず、機器に設置した自動取得データに頼った判断をする傾向が若手を中心に強まっている。データには正確なものと間違ったものが混在しており、それをいかに取捨選択していくかは、やはり現場に行って操業に携わる社員とコミュニケーションをとり、考えることが肝要。そうした教育も心掛けていきたい」

――グループ会社の強化策は。

 「売上高を増やすことがまずは目標だが、シーケー物流の危険物倉庫も増設し、すでに稼働率は高い状況。シーケークリーンアドのグリスフィルター事業も堅調。来年3月にフィルター洗浄の新工場棟が完成すれば、処理能力は現在の倍になる。これも売り上げ増に寄与する。今後は子会社間の人事交流も促進するとともに、M&Aなどで子会社を増やしたいという希望もある。状況をよく見ながら判断していきたい」(片岡 徹)

プロフィール

 行動派、現場主義。「問題解決の糸口は徹底した現場観察にある」と。製鋼工場と技術部が長く、2度のCC立ち上げ、LFの導入など中核製鋼設備の建設に携わる。韓国、インドで技術指導も。好きな言葉は上杉鷹山の「為せば成る…」。趣味は、栄子夫人との日帰り温泉めぐりと山登り。

 重松 久美男氏(しげまつ・くみお)81年(昭56)九州大学工学部鉄鋼冶金学科卒、中部鋼鈑入社、04年製造部長、07年生産業務部長、08年参与、10年取締役経営企画部長、13年製造所長、14年常務、17年社長。福岡県出身、61歳。

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