【トップインタビュー 共英製鋼・森光廣社長】「国内外で300万トン」達成へ 値上げでスプレッド確保

――4~6月期が経常減益となり、通期連結売上高は30億円下方修正の1800億円、経常利益は11億円下方修正して54億円の予想とした。理由は。

 「今期から米・ビントンスチールが連結に加わることなどから、通期売上高は前期(1459億円)比増収となるが、ベトナムの第2四半期(4~6月)の市況悪化に伴う販売減などで期初の売上高予想1830億円を下方修正した。経常利益の下方修正は、主にベトナムの市況悪化に伴うスプレッド縮小などによるもの。ビナ・キョウエイ・スチール(VKS)社の2月の溶鋼漏れ事故による製鋼1カ月停止も影響した」

共英製鋼・森社長

――ベトナムの状況は。

 「7月から回復してきた。VKS社の販売量も7月は10万トン近くに増えた。今期出荷量は前期比8万トン増の80万トンの見込みだ。ベトナム北部のキョウエイ・スチール・ベトナム(KSVC)社も1万トン増の28万トンを計画している。ベトナムの経済成長率は政府目標の6・7%に対して上期は5・7%程度に鈍化したが、下期は回復の見通しだ」

――昨年12月に買収した米・ビントンスチール社の状況は。

 「生産は年間20万トンペース。製品価格上昇で1年目から黒字だ。今後、生産数量増や品質、生産性向上に向けてレイアウトの変更、圧延ロール・スタンドのリプレースなど順次改善を進めていく」

――国内の見通しは。

 「鉄スクラップが3万円台になってきた。製品値上げが喫緊の課題。スプレッドを確保しないと厳しいが、下期は需要も出る。普電工の今年度鉄筋需要見通しは2・1%増の765万トン。当社グループも前年度比3%増の171万トンの販売を計画している」

――スクラップの見通しは。

 「中国次第で不透明だが、スクラップ市況に振り回されず製品販価をしっかり確保していきたい」

――中期的な強化策について。

 「当社の鉄鋼事業拠点は国内4カ所、海外はベトナム2社と米国1社の合計3カ所。国内の力をさらに強めながら、ベトナムと米国を軸とした海外事業で成長戦略を推進していく。今期の製品販売計画は国内171万トン、ベトナムVKS社80万トン、KSVC社28万トン、米ビントンスチール20万トンの合計299万トン。当面目標の『300万トン』が見えてきた。今期達成の可能性もある。概算で国内170万トン・海外130万トンだが、海外を増やして数年以内に国内・海外同等の生産規模にしていきたい」

 「ベトナムVKS社は7月の製鋼量が4万2千トンを記録し、年率50万トン体制の確立が見えてきた。圧延(2ミル)も80万~85万トン体制になってきた。10~11月にはVKS社に近い港湾会社チーバイ・インターナショナル・ポート(TVP)社の港が完成する。VKS社はスクラップ輸入でメリットが出る」

――国内は。

 「数量だけを目標とせず、今後の電炉業界の再編など変化に対応できる中核会社として力を付けていく。山口、名古屋、枚方、関東スチールの4拠点でコスト改善・品質向上・新製品開発などに注力し競争力を高めていく。また各拠点の特長を生かしながら営業面での連携・協力体制を強化し、グループ総合力を高めたい」

 「ネジ節鉄筋のカプラー(機械式継手)を製造していただいている鋳物の老舗メーカー『吉年』(大阪府河内長野市)の事業再生を支援して多方面で連携を強めていきたい」

――環境リサイクル事業は。

 「昨年10月に、グループ内再編を実施したが、電気炉による廃棄物の溶融処理は処理量に限界があるので、さらなる発展のために他社との提携やM&Aも含めた検討が必要だ」

――設備投資について。

 「老朽更新、省エネ、品質向上が中心。VKS社は20年を超える第1圧延ラインの更新や疵検知機の設置、ビントン社でのフリッカー設備更新などを予定している。国内では枚方、山口で加熱炉改修、関東スチールでは取鍋タンディッシュ更新など省エネや品質強化対策を継続実施する」

――人材育成は。

 「ここも課題だ。グローバルな経営感覚を持った次世代の人材育成が必須。昨年からは1年間にわたって能力を磨く新たな管理職向けの研修を導入した。また女性活用の取り組みも進めている。今年は総合職に女性2人を採用し、女性総合職は計9人となった。1人は管理職。将来は海外派遣もできるようになってもらいたい。また海外の関係会社から日本に来て働いてもらう形も進めたい」(小林 利雄)

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