稀代の強打者プホルスに異変!? MLB史上初ベスト&ワースト選手の可能性

エンゼルスの主砲、アルバート・プホルスといえば、言わずもがなの世紀の強打者だ。2001年にデビュー以来、10年連続3割超え、2度の本塁打王を含む12年連続30発超え、新人王、3度のMVP受賞、首位打者、ゴールドグラブ賞、シルバースラッガー賞、2度のワールドシリーズ優勝など、数々のタイトル歴を誇っている。今年6月3日には史上9人目となる600号ホームランを放ち、エリートの仲間入りをした。

エンゼルスのアルバート・プホルス【写真:Getty Images】

選手の価値を計る総合的指標WAR値が、今季はなんとメジャーでワースト

 エンゼルスの主砲、アルバート・プホルスといえば、言わずもがなの世紀の強打者だ。2001年にデビュー以来、10年連続3割超え、2度の本塁打王を含む12年連続30発超え、新人王、3度のMVP受賞、首位打者、ゴールドグラブ賞、シルバースラッガー賞、2度のワールドシリーズ優勝など、数々のタイトル歴を誇っている。今年6月3日には史上9人目となる600号ホームランを放ち、エリートの仲間入りをした。史上4人目となる600本塁打&3000安打の達成も射程内に捉えている。輝かしいキャリアを誇るプホルスだが、意外にも今季は“ある数値”がメジャーワーストを記録しそうだという。米スポーツ専門局「ESPN」公式サイトが伝えている。

 気になる“ある数値”とは何か? それは野球選手の価値を計る総合的指標とされるWAR(Wins Above Replacement)だ。走攻守投の貢献度を総合的に評価し、代替可能な選手を比較してどれだけチームの勝利数を増やせたかを示すセイバーメトリックスの指標だが、8月31日現在、プホルスの今季WARは-2.0でメジャー全野手の中でワースト、投手を合わせて見ても、クリス・ティルマン(オリオールズ)と並んでワーストタイとなっている(WAR値はBaseball Referenceを参照)。

 今季は本拠地エンゼルスタジアムでの打率が.239と落ち込み、出塁率.278はリーグ平均出塁率.325を大幅に下回る。さまざまな成績を見比べてみた上で、記事では「DHが効力を持たない時代にあってでさえ、プホルスは守備価値がほとんどない(まったくない)ポジションで文句なしのワーストヒッターだ」と断言。この調子でシーズン終了を迎えた場合には、「キャリアでベストとワースト(WAR)を記録した史上初のメジャー打者になる」という。

 米データサイト「Baseball Reference」によると、プホルスは2006年(8.5)、2008年(9.2)、2009年(9.7)にメジャー全打者のうちベストのWAR値を記録している。記事によれば、これまでベストWAR値を記録した選手のワーストへの最も大きな“転落”は、1945年にベストWAR8.7をマークしたヤンキース二塁手のスナッフィー・スターンワイスで、1950年にはメジャーワースト2位の0.0をとなった。つまり、もしプホルスが今季ワーストWARのままシーズンを終了してしまったら、スターンワイスを抜いて史上初のベスト&ワーストWAR経験者となってしまうというわけだ。

ワーストWARでも毎日プレー「選手の“能力”と“価値”は違う」

 こういう現象が起きることについて、記事では「選手の“能力”と“価値”は違う」という面白い考察を紹介している。プホルスの場合を例に取れば、通算600本塁打を誇る強打者は“能力”という点では決してワースト選手ではないが、多くの出場機会を得ながら最少の“価値”しかあげられていない、となる。さらに、最少の価値しか提供できない選手が毎日スタメンに名を連ねるのは、首脳陣からの厚い信頼があるからこそ。つまり、これまでの貢献度が今季のスランプをカバーするに余りあるものだからだ、という。

 今季はそういった傾向の打者が多いようで、今季打者ではプホルスに次ぐWARワースト2位のカルロス・ゴンザレス(ロッキーズ)は2010年にはベスト15位を記録。今季ワースト10位タイのエイドリアン・ゴンザレス(ドジャース)は2009年にベスト9位、ホセ・バティスタ(ブルージェイズ)は2011年にはベスト3位だったのが今季はワースト7位となっている。

 30日(日本時間31日)の本拠地アスレチックス戦では2打席連続となる今季20号、21号を放ったプホルス。これでメジャー通算2939安打となり、3000本まで61安打となった。WARではワーストの数値を記録しているかもしれないが、一発の恐れがあるプホルスが打線にいるだけで、その前後の打者に対する相手投手の攻め方は大きく変わってくるだろう。プホルスほど能力と実績のある選手には、セイバーメトリックスだけでは計れない無形の価値が備わっている。(Full-Count編集部)

© 株式会社Creative2