自閉スペクトラム症知って

 発達障害の一つ、自閉スペクトラム症の当事者、山田隆一さん(23)=長崎市=が、今春長崎大を卒業した後、体験や考えを社会に発信する活動に乗り出した。8月30日には西彼時津町など主催の「こころの健康講座」で講演、「より多くの人が生きやすい社会をつくりたい」と訴えた。

 山田さんによると、自閉スペクトラム症の人はこだわりが強く、他人に合わせることが苦手で、コミュニケーション能力に問題を抱える。そのことに生きづらさを感じ、普通の人より自殺率が高いという外国の論文もあるという。山田さん自身、幼い頃から孤立しがちで、友人をつくることができなかった。進学した高校は中退、通信制に転入して卒業した。

 自閉スペクトラム症の人は、得意なことと苦手なことの差が極端だ。山田さんの場合、個人プレゼンには取り組める一方、他者との協力が必要なグループワークは苦手。暗黙の了解が分からないときがあり、やるべき仕事の範囲は具体的に指示されなければ想像できない。しかし得意な作業であれば、人一倍集中力を発揮できることがあるという。

 山田さんは大学に入ってから、積極的な人間関係の構築を決意。知り合いレベルの関係ならつくれるようになった。イタリアへの交換留学も経験。現地で多様な個性が受け入れられていることを知り、自分と同じように悩んでいる人の力になろうと決心した。講演では「お互いの個性を認めることが、みんなが生きる社会にとって有益になる」と訴えた。

 山田さんによると、人前で話ができる当事者は例外的で、全国的にも数が少ないという。「人が苦手な私でも、事前に準備すれば講演できる。自閉スペクトラム症への理解を広げるため全国どこへでも積極的に出かけたい」と話している。

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