米通商法232条、米鋼管メーカーが「早期発動を」 大統領に書簡、丸一鋼管の現法など連名

 米国が輸入鉄鋼製品を対象に拡大通商法232条(国防条項)の発動を検討している問題で、米国の鉄鋼業界団体が相次ぎ、輸入制限措置の早期適用を求める書簡をトランプ米大統領に出しているが、今週、米鋼管メーカーなど24社が連名で出したレターが波紋を呼んでいる。丸一鋼管の現地法人などが名を連ねているためで、発動に反対の立場をとる日本政府や日本の鉄鋼業界も困惑の色を隠せないでいる。

日本政府も困惑

 鋼管メーカーなど24社は8月29日付で大統領宛てのレターを発出。輸入制限により国内供給体制を保護することが安全保障上必要などとし、大統領に対し速やかな発動を求めた。日本政府などが困惑しているのは、丸一鋼管の現地法人のほかJFEスチールが50%出資し、鋼管や鋼板を製造するカリフォルニア・スチールなど日本の関係企業が名を連ねている点。

 世耕弘成・経産相は6月に訪米した時にロス商務長官と会談。「専門的な調査が必要」などと指摘し、慎重な対応を求めた。日本鉄鋼連盟も232条の発動に対しては反対の立場をとる。

 経産省の小見山康二・金属課長は、日本の関連企業が名を連ねたことについて「米国で高い利益を上げている企業が輸入製品によって損害を受けているとは考えにくい。真意を計りかねる」と話す。

 232条をめぐっては、米国内でも慎重な意見が少なくない。自動車など鉄鋼のユーザー業界が懸念を表明。EU(欧州連合)などからの対抗措置を危惧する農業団体も反対の声明を出している。

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