東証2部・名証2部上場 環境装置製造の(株)郷鉄工所が約束手形の不渡りをリリース

 東証2部と名証2部上場で産業機械製造などを手がける(株)郷鉄工所(TSR企業コード:471004715、法人番号:5200001014775、岐阜県垂井町表佐字大持野58-2、設立昭和22年2月19日、資本金7億1735万5860円、林直樹社長)は9月1日、「8月31日付けの約束手形について不渡り回避できなかった」とリリースした。また、「平成29年9月4日付けで金融機関との取引が停止される見込み」としている。
 銀行取引停止処分を受けた場合、上場会社の倒産はタカタ(株)(TSR企業コード:295877413、法人番号:5010401052766、品川区東品川2-3-14、登記上:港区赤坂2-12-31、設立平成16年1月30日、資本金418億6200万円、高田重久社長)についで今年2社目となる。
 同社の平成28年12月時点での負債総額は55億2000万円。

 創業当初はダム建設などで使用する建設機械修理などを手掛け、昭和37年10月に名証2部に上場(その後東証2部にも上場)した。その後、破砕粉砕機などの橋梁鉄構部門を主業に、水門等などの製造も行うなど異業種分野にも進出、ピークとなる平成5年3月期には売上高約90億8800万円をあげていた。
 しかし、以降は減収推移が続いていた。28年3月期は環境装置製造(27.4%)、橋梁鉄構および水処理装置(23.6%)、ライニング品製造(23.2%)、破砕粉砕機製造ほかを手掛けていたが、売上高37億9080万円にまで減少。同期で5億9470万円の債務超過に転落し、継続企業の前提に関する注記(GC注記)を記載していた。
 債務超過解消に向け28年5月、既存株主に新株を割り当てる株主割当増資を行うと発表。既存株主に対し所有株式1株につき2株の新株を割り当て、新株2425万5000株を発行(発行価額は1株60円)し、最大14億5530万円を調達する予定だった。だが、実際に払込があったのは369万9362株にとどまり、残り2055万5638株が失権。債務超過解消には至らず、29年3月期第1四半期の決算短信でもGC注記を記載した。
 28年8月以降、金融機関からの借入は困難な状況が続き、国内の事業法人や個人からの借入などによる資金調達を活発化させたが、資金繰りは改善されず、その後は借り換えなどで凌いでいた。だが、29年3月期も業績改善は進まず、資金繰りは逼迫。取引先から金融機関口座が差押えされるなど信用性低下に拍車がかかった。8月9日、平成29年3月期有価証券報告書について法定期限である29年8月10日までに提出できない見込みを開示。8月10日には29年3月期決算の有価証券報告書の提出ができなくなったことを理由に9月11日付けで、上場廃止となることが決まっていた。
 同社は「通常通り事業は継続している」とコメントしている。

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