不戦への誓い新たに 「対馬丸」犠牲者を追悼

 船員養成のための航海訓練を手掛ける海技教育機構(横浜市中区)の練習船「銀河丸」(6185トン)が4日、大阪港に入港し、1カ月にわたるシンガポールへの遠洋航海を終えた。8月31日には鹿児島県の悪石島沖で、太平洋戦争末期に米潜水艦に攻撃されて沈没した学童疎開船「対馬丸」(6754トン)犠牲者の慰霊式を執り行った。

 対馬丸は日本郵船の貨物船として建造された。1944年8月22日、沖縄・那覇から長崎に向かう途中に撃沈。犠牲となった1476人の大半は国民学校(小学校)の児童だった。

 慰霊式は当初の航海計画にはなかったが、熊田公信船長の呼び掛けで乗組員・実習生の有志約30人が参列。沈没した海域で敬礼と黙とうをささげた後、菓子や飲み物を海に供えた。

 銀河丸は8月5日、実習生164人(うち女子21人)が乗船して横浜港を出港。シンガポールに向かう途中の南シナ海海上では、旧日本軍に徴用された6万人余りの戦没船員へ哀悼の意を表するとともに、不戦への誓いを新たにする「船上慰霊式」を執り行った。

 対馬丸の慰霊式の最中には多くのイルカが近づき、あたかも海に眠る子どもたちがイルカになって喜んでくれているような気がしたと話す熊田船長。「この航海での慰霊の中で、実習生には平和をしっかりと築き、保ち、そして生きることの大切さを感じてもらいたい」と語った。

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