広島の“泣き所”三塁手、規定打席到達の安部、3割超え&正位置獲りなるか

セ・リーグは広島の優勝マジックが消滅し、わずかながら阪神に優勝の可能性が出てきた。ペナントレースは過熱している。そんな中で、広島に新しい「正選手」が誕生した。三塁を守る安部友裕が、晴れて規定打席に達したのだ。

広島・安部友裕【写真:荒川祐史】

今季は83試合で三塁出場、打率はリーグ7位の.306

 セ・リーグは広島の優勝マジックが消滅し、わずかながら阪神に優勝の可能性が出てきた。ペナントレースは過熱している。そんな中で、広島に新しい「正選手」が誕生した。三塁を守る安部友裕が、晴れて規定打席に達したのだ。

 安部は福岡工大附属城東から2007年高校ドラフト1巡目で広島に入団。3年間はファーム暮らしだったが、2011年に1軍に初出場。それ以後は、内野のユーティリティ選手として起用されながら、打撃力の向上に合わせて三塁手での起用が多くなった。

 今季はここまで111試合に出場し、キャリア10年目で初めて規定打席に到達。打率.306でリーグ7位にランクインしている。昨季三塁だったルナが退団したことに加え、40歳の新井貴浩に代わって一塁での出場機会が増えたのだ。111試合のうち83試合で三塁を守り、22試合で一塁の守備に就いている。

 内外野で若手選手の台頭が著しい広島だが、三塁はレギュラー選手がなかなか定まらず。唯一の「泣き所」というべきポジションだった。

 過去10年間、広島で最も多く三塁を守った選手の打撃成績を見てみよう。()は三塁での出場試合数。順位は打率順位。▲は規定打席未達。

2008年 シーボル(108)15本53打点 打率.273 ▲
2009年 マクレーン(92)18本52打点 打率.244 27位
2010年 小窪哲也(63)1本24打点 打率.207 ▲
2011年 バーデン(61)3本20打点 打率.281 ▲
2012年 堂林翔太(143)14本45打点 打率.242 22位
2013年 堂林翔太(105)6本41打点 打率.217 ▲
2014年 梵英心(63)8本41打点 打率.269 ▲
2015年 梵英心(87)6本27打点 打率.237 ▲
2016年 安部友裕(93)6本33打点 打率.282 ▲

2008年に新井が阪神移籍後は三塁レギュラーが決まらず…

 一時期の広島では、三塁は外国人選手が守るポジションだったが、好成績を上げた選手はいない。2012年には当時3年目の堂林が抜擢されたが期待に応えられず。2014年はひざを負傷したベテラン梵が遊撃からコンバートされたが、正位置を確保するには至らなかった。昨年から安部が起用されたが、規定打席には遠く及ばない292打席で終わった。

 規定打席に達した安部が正三塁手として3割をマークすれば、広島では2005年の新井貴浩以来となる。この年の新井貴浩は121試合で三塁を守り、打席では43本塁打で本塁打王を獲得。その他も94打点、打率.305(12位)と、まさに主軸の働きをした。2005年には一塁手で35試合に出場しただけだが、ベストナインの三塁手として打点王を取った阪神の今岡誠が選ばれたため、一塁手としてベストナインに選出されている。

 その新井が2008年に阪神にFA移籍して以後、広島は三塁手が固定できずに苦労してきた。

 安部は28歳とやや遅咲きではあるが、同年の同じ日に同じ病院で生まれた縁を持つエース野村祐輔とともに、ようやくカープの主力選手になりつつある。

 歴史を振り返ると、広島は衣笠祥雄、山崎隆造、江藤智、そして新井貴浩とリーグを代表する強打の三塁手を輩出してきた。23歳の西川龍馬も台頭しているが、安部は広島の「名三塁手」の系譜に名を連ねることができるだろうか。(広尾晃 / Koh Hiroo)

© 株式会社Creative2