大型ハリケーン直撃の米・南テキサス、油井管関連工場など操業再開 シェール掘削動向に懸念も

 先月末に米国テキサス州南部を直撃した大型ハリケーン「ハービー」は、ヒューストンの一部が冠水するなどメキシコ湾岸地域に甚大な被害をもたらした。同地域の油井管関連工場や問屋も一時操業停止に追い込まれたが、今週からおおむね順次再開しているもようだ。オイル&ガスマーケットに回復基調が見え始めた中、同州の一部シェール開発区も被害を受けており、今後の掘削動向への影響も注目されている。

 今回のハリケーンの特徴は大雨。トータルの降水量は過去最多規模といわれる。

 日系の鉄鋼メーカーや商社が展開する現地事務所、油井管加工拠点、問屋などには大きな被害はなかったもようだ。オイルメジャーの現地拠点では、エクソンモービルやBPは先週事務所を閉鎖。シェルは現地5日まで閉鎖予定で、今週から順次営業を再開する見込み。一部地域では自宅に浸水被害があって、ホテルに仮住まいするスタッフも出ている。

 新日鉄住金がヒューストンで展開する油井管加工会社「サザンチューブ」、仏バローレックの子会社で新日鉄住金と住友商事が出資する油井管ねじ切り会社VAMUSAでは設備上大きな損害はなかったもよう。テナリスはヒューストン、フリーポート、ベイシティにあるすべての工場で先月31日までに操業を再開。ただ、ベイシティで建設中の継目無(シームレス)鋼管ミルについては、本格的な圧延開始を当初9月から10月に延期することとなった。

 伊藤忠丸紅鉄鋼の油井管問屋・スーナー社は先週から営業を再開しており、5日からは出荷も開始。ただ他の日系商社系問屋と同様に、自社で持つ在庫の被害状況把握についてはこれからだ。

 中国の天津鋼管が継目無鋼管ミルを建設中のテキサス州コーパスクリスティは、今回のハリケーンの上陸地点でもっとも被害の大きかった地域。同ミルへの被害の有無や今後の工事進ちょく状況への影響が注目される。

 ハリケーンはイーグルフォード層が一部生産停止になるなど、同州内にあるシェール開発区の操業にも影響を及ぼした。直近北米の稼働リグ基数は940基前後で推移しており大きな変化はないが、今後稼働リグ基数は減る可能性もある。一方、原油価格は一時スポット価格が上昇したが、足元は1バレル40ドル半ば~後半で推移。今のところ平静を保っている。

 被害状況の詳細はこれから少しずつ明らかになるだろうが、「今回のハリケーン被害がオイル&ガスの回復基調に水を差すことにならなければ」と懸念する声も聞かれる。

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