【品種別戦略】〈JFEスチール鉄粉セクター長・門田純常務(2)〉高付加価値品比率を拡大 高強度化などで新製品開発加速

――今年度の生産見通しから伺いたい。

 「製品ベースで昨年度比2千トン増の5万8千トン、下期は3万トンを見込んでいる。当社の鉄粉の7割は粉末冶金向け、うち9割が自動車部品向けで、国内外の日本車生産の伸びが追い風になる。携帯カイロ向けも堅調だ」

JFEスチール鉄粉センター・門田常務

――収益改善の取り組み方針は。

 「偏析防止処理混合鉄粉『クリーンミックス』などお客様のニーズに合わせて高付加価値品の比率を拡大し、プロダクトミックス改善を進めて、コストダウン努力により安定的に収益を生み出せる事業構造にしていく」

 「鉄粉販売に占めるクリーンミックスの比率は13年度の43%から15年度47%と拡大しており、今期は50%を見込んでいる」

――海外市場への対応はどう強化しようと。

 「日本の部品メーカーの海外生産展開に対して、まだ対応し切れていない。商社の力もお借りして海外市場での販売力を強化する」

 「宝武鋼鉄集団の100%子会社である宝鋼金属と折半出資で上海にクリーンミックスの製造販売合弁を設立した。来年3月に営業生産を開始する予定で、準備を進めている。主に中国の鉄粉を活用し、東日本製鉄所(千葉地区)から供給するのは一部だが、巨大な中国市場でJFEブランドを広めるとともに、合弁を通じて市場をよく知ることで事業拡大につなげていく」

――開発製品についても伺いたい。高強度ニッケルレス合金鋼粉『FMシリーズ』は。

 「引張強度600メガパスカル級から1500メガパスカル級までレパートリーをそろえている。耐衝撃強度(シャルピー衝撃値)を高めた高靱性タイプも開発し、高強度でかつ高靭性の新商品開発を継続している」

 「自動車用焼結部品の切削加工のコストダウンに寄与する『JFMシリーズ』はお客様のニーズに合わせてカスタマイズしながら供給し、採用が拡大している。金型充填性を高め成形体重量の変動を小さくできる『クリーンミックスZERO』もご評価頂けるようになっている」

――近年は食料関係の用途の広がりもある。鉄コーティング水稲直播向けプレミックス粉『粉美人』は。

 「国内作付面積における水稲直播の普及度は1%程度とまだ低いが、長期的な拡大に期待している。海外でもアジア5カ国で普及に取り組んでいる」

 「水産関係では牡蠣の養殖場でも昨年から当社の鉄粉を試して頂いている。牡蠣の養殖は陸に近いほど味が良くなるという説があり、鉄粉は悪臭防止に効果があるようだ」

――長期的な展望も伺いたい。電気自動車の普及は鉄粉事業にどうかかわってくるのか。

 「日本車の粉末冶金製品の使用原単位は1台当たり9キロ程度。エンジン、トランスミッション関係が大半を占めるため、EV化で原単位は大幅に低下する。粉末冶金は量産部品に適しており、自動車ほどまとまった需要分野は見当たらない。当分は粉末冶金需要は底堅いし、きちんと開発・供給していくことが最優先だが、EV化に備えた研究開発も力を入れていく」

――電磁鉄粉も注力分野になる。

 「当社独自の取り組みもあるが、一例を挙げると、産学官による東北マグネットインスティテュートに参画し、革新的軟磁性合金『ナノメット』の性能向上や生産性向上など開発、実用化研究に取り組んでいる」

――設備投資も伺いたい。

 「一昨年に仕上げ還元炉の制御装置を老朽更新し、昨年は鉄粉生産管理システムを大幅にリフレッシュし、海綿鉄工場の合理化工事による燃料原単位の削減、品質安定化も進めた。来期は千葉地区の構内で分散している製品倉庫を集約、効率化する。クリーンミックスやJFMなどレパートリー拡大に伴う増産対応でホッパー増設も行う」

 「仕上げ還元炉の老朽更新は今後の製品戦略と絡めて検討していく。既存炉の生産性向上、能力増強を行ったので、じっくり考えていきたい」(谷山 恵三)

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