高炉メーカー、建築用鋼材の値上げ完遂へ不退転 需給タイト、マージン確保し安定供給

 高炉メーカーは建築用鋼材の値上げ完遂に向け不退転で臨む。足元、H形鋼や鋼管杭、建材向け厚板などの需要が伸長するなど需給のタイト感が強まりつつある。下期以降も需要は堅調に推移するとみられ、高炉各社は原料価格上昇分の販売価格への転嫁を確実に行うことで生産設備の更新などに必要なマージンを確保し、安定供給を担保したい考えだ。

 建築用鋼材需要は工場や倉庫、事務所、倉庫など向けを中心に堅調に推移。国土交通省の建築着工統計から試算する換算鉄骨量は、今年1~6月累計で258万トンと直近8年間で最高水準にある。

 鉄骨ファブリケーターは少なくとも今年度末までの加工案件を確保しており、下期以降のさらなる需要増が確実視されている。

 加えて土木用鋼材の需要期に入ることから、形鋼ラインはさらなるタイト化が見込まれる。来年度以降も再開発案件を中心に需要は高水準で推移するとみられるが、安定供給に向けたラインの設備更新は急務となっており、原料価格が値上がり基調にある中で再生産可能なマージンの確保が高炉メーカーにとって死活問題となっている。

 これまで各社はマージン確保に向けた値上げを実施。新日鉄住金は直近8月契約分で店売り向けH形鋼をトン2千円値上げ。JFEスチールも直近8月契約分から店売り向けH形鋼やロールコラムについてトン3千円値上げし、最終的には現状比で5千円以上の値上げを目指している。

 各社は累計でトン2万円を超える水準の値上げを必達目標として実行中だ。

 特にロールコラムは値上げが遅れ、需要の伸長に価格の上昇が全く追いついていない。H形鋼などは従来、プロジェクト向け販価の低迷が店売り向け販価の上昇を阻害する一因ともされていたが、プロジェクト案件の増加によって店売り向けの販価上昇が遅れる逆転現象が生じている。

 本格的な需要期に差し掛かる中、メーカーは再生産可能なマージン確保に向け不退転の決意で販価改善に取り組み、適正な販価による適正な利潤を実現していきたい考え。

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