【トップインタビュー 日鉄住金スチール・桂田光太郎社長】「店売り専業」の機能に磨き 若手育成で現場力向上

――前17年3月期は売上高114億円、経常利益11億円で約11億円の増収および約1億円の減益だった。今期見通しは。

 「マーケットは堅調であり、昨年並みはいくものと考えている。一方、足元の鉄スクラップ価格の高騰の影響で、スプレッドは大きく縮小しており、収益面では厳しくなっている。収益を確保するためには販売価格の引き上げが必須である」

日鉄住金スチール・桂田社長

 「建設需要では東京オリンピック需要等の大型プロジェクトに目がいくが、H形鋼に関しては昨年から西日本の小規模案件等の特約店マーケットも思いのほか堅調。鉄スクラップは海外需要に引っ張られ騰勢は続きそうなので、物件向けH形鋼価格も大型物件中心に上昇するだろう。当社としては、特約店が市況を押し上げやすい環境づくりに注力したい」

――中期経営計画は最終年度。達成状況はどうか。

 「今中期は『安定した利益を稼げる体質づくり』をテーマにしている。この3年間、実需見合いの生産販売に徹する一方、コスト低減対策でも、酸素吹込みで燃焼効率を高める『Co―Jet』の効率運用や、加熱炉のリジェネバーナー導入、設備の老朽更新など実施してきた結果、年度ごとの計画は達成できている」

――次期中期計画への課題は。

 「当社は、新日鉄住金グループの西日本地区におけるジュニアH形鋼の店売り専業ミルとして生きてきた。今後もこの基本スタンスは変わらない。店売りメーカーとして、特約店向けのデリバリーの機能を引き続き強化していき、店売りマーケットでの当社の存在感をさらに高めていきたい。一方では、新日鉄住金グループの物件向けH形鋼の受注に際しては、ジュニアH形鋼を当社が供給する役割も担ってはいるが、現状は物件対応としての倉庫機能は不十分。倉庫の確保や情報管理などハード・ソフト両面での拡充が今後の検討課題になる。ただし、当社はあくまでも店売りが基本。店売りのプラスアルファになればよいと考えている」

――現在の生産状況について。

 「月2万トン強の生産だ。現在の要員やシフト体制では2万5千トンがマックスだ。生産は金土日の3連続操業で対応している。その他の平日はラインを止めている。また、新日鉄住金・和歌山製鉄所から溶銑を供給してもらっており、鉄スクラップと合わせて製鋼しているのでコスト面では優位性がある」

――人材育成などへの取り組みは。

 「製造現場の社員は30歳代が中心になって操業しており、世代交代が比較的円滑に進んでいる。当社は88年(29年前)の設立で、創業時は住友金属工業と共英製鋼から製鋼・圧延などの要員をいただいて生産を開始したが、早い時期(22年前ごろ)からプロパー社員の定期採用を実施してきた。現在は、創業時の要員がすでに定年退職し、プロパー社員が40歳前後になり、若手を育成しながら技術向上を進めている。若手社員もコンスタントに入社しており、製造現場の年齢構成や技能伝承など比較的いい形で動いている。JK活動も活発で、JK発表会は大変面白い。今後もこの流れを大事にしながら生産性向上、品質向上、コスト低減などの取り組みをしっかりやっていき、メーカーとしての現場力をアップしていきたい」(小林 利雄)

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