【品種別戦略】〈JFEスチール厚板セクター長・門田純常務(3)〉「事業損益黒字化目指す」 高級鋼比率、4割に拡大

――まずは前年度の総括から。

 「16年度の厚板生産量は、15年度の450万トン(スラブ装入ベース)比で微増の470万トンと9割操業レベルだった。UOE鋼管の生産量は11万トンと15年度の16万トンからさらに減少した。プロジェクト案件が端境期にあり、採算重視で選別受注をしたためだ。今年度はタイ国営石油会社向けUO鋼管23万トンの受注もあり、厚板生産量は増える見通しだ」

――輸出比率や向け先比率は?

 「輸出比率は約35%と全社平均の5割程度に比べて低い。向け先は例年同様、造船向けが5割強を占めた」

JFEスチール厚板セクター長・門田常務

――セクターの収益は?

 「下期の主原料コストアップを受けた価格転嫁に時間がかかり、スプレッド悪化で昨年度はセクター損益が通期赤字に転落した。海外市況低迷で輸出採算が厳しく、UO大径鋼管も数量の落ち込みで低迷した。今17年度は黒字化が目標だ」

――今年度の需給環境について。

 「需要面で明るい材料が見え始めている。日本の造船会社は平均で約3年弱の受注残があるが、今年に入り新規受注も前年よりは増えてきた。国内造船向け厚板需要量は、輸入鋼材を含めて昨年度は360万トンだったが、今年度もほぼ横ばいの350万~360万トンを想定している」

 「建機向けは下期に排ガス規制の駆け込み反動で落ち込むとの見方もあったが、海外向けが旺盛で建機メーカーは当面フル生産が続きそうだ。当社の耐摩耗鋼の生産販売量は、昨年を大きく上回るレベルで増えている」

 「建築向けも東京五輪やその関連需要で底堅く推移しそうだ。グループ会社のJFE鋼材やセイケイも仕事量が多く堅調だ。今年度の鉄骨需要量は前年度比10万トン増の520万トンとみている」

――そうした中、厚板セクターの課題は。

 「先ほど申し上げたように、収益面では黒字転換が大きな目標。現行中期計画の実績は造船や資源エネルギー分野などの低迷で計画値を下回るが、10年先を見据えてやるべきことは変わらない」

――収益に大きく影響する価格政策は。

 「昨年度の原料コストアップ分を十分に価格に反映できておらず、遅れが生じている。昨年下期より、ヒモ付・店売り全ての分野で2万円の値上げを打ち出しているが、足元、原料価格も再び上昇傾向にあり、値上げの完全浸透を図っていく」

――具体的な諸課題の取り組みについて。

 「第一は、基本となるデリバリー、品質、コスト競争力に磨きをかける。販売先との間で統合出荷納入システム『One JFE』を昨年度立ち上げ、デリバリー精度の向上を図っている。また福山・倉敷・京浜の3地区でオーダーエントリーシステム共通化を実施したほか、商品設計能力向上プロジェクトと名付けた取り組みも進めており、3地区が相互にノウハウや知見経験を横展開できる仕組みを構築中だ。AI(人工知能)含めてITの力を活用し、お客様から選ばれる存在であり続けたい」

――2点目は。

 「高級鋼の比率拡大。15年度の実績は約2割だが、これを今年度末には3割超に、10年後には4割に引き上げたい。具体的にはラインパイプ用や耐摩耗鋼、建築用ハイテン材の拡販を狙う。高級鋼は製造負荷が高いので、ネック工程解消のための設備・ソフト面の手を打っていく」 

――3点目は。

 「伸びゆく海外需要の捕捉だ。エネルギーやインフラ分野向け中心に、成長市場を捉えていく。具体策の一つはUAEで18年10月稼働予定の大径溶接鋼管合弁だ。インフラ分野では、建材センターと連携しながら進めていきたい」

――厚板加工を手掛けるJFE系事業会社の現状と展望は。

 「足元は建機や建築向け需要が堅調なため、活動水需は低くない。ただ中長期を見据え、考えていく必要がある」

 「メーカー直系シャーであるJFE鋼材とは、母材から切板に至るまでのトレーサビリティや品質保証などでIT活用の研究を進めている」(一柳 朋紀)

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