東京五輪の持続可能な運営、公開ブリーフィング開く スズトクHD・鈴木会長、都市鉱山でメダル「問題は情報非公開性」/東京製鉄・西本社長、電炉鋼材トレーサビリティー「五輪にも採用を」

 2020年の東京五輪・パラリンピックで持続可能性に配慮した大会運営を図るため、企業などにどのような取り組みができるかを話し合う、公開ブリーフィング「2020SDGs東京五輪『持続可能性運営計画第2版』に向けて、企業との情報共有」が都内で開催され、約200人が参加した。パネルディスカッションには東京製鉄の西本利一社長やスズトクホールディングスの鈴木孝雄会長が参加。鉄スクラップのリサイクルを通じ、持続可能な社会構築に電炉メーカーや鉄スクラップ業が大きな役割を果たしていることを紹介した。西本社長は東京都が進める電炉鋼材のトレーサビリティーの仕組みを東京五輪大会でも採用するよう提案した。

東京製鉄・西本社長㊧とスズトクHD・鈴木会長

 東鉄の西本社長は「この場は20年の東京大会がメーンの議論をしているが、その先にはパリ協定が定める2050年の目標であるCO2の80%削減が視野にある」と述べた上で、同社が2050年に向けた長期環境ビジョン「Tokyo Steel EcoVision 2050」を策定したことを紹介。電炉鋼材のシェア拡大により低炭素・循環型社会を実現していく考えを説明した。

 また、東京都が電炉鋼材の利用促進を一段と推し進めるため、土木・建築工事の施工業者がリサイクル鋼材の使用量を把握するよう環境物品等のチェックリストを改定したことを挙げて「こうした取り組みを20年の東京五輪・パラリンピック大会でも進めていただきたい。そこを起点として全国の自治体、さらには全世界にリサイクル鋼材のトレーサビリティーの仕組みを導入することで、リサイクル鋼材の普及によるCO2の80%削減が可能な世界を目指していくべきだ」と語った。

 東鉄が供給可能なリサイクル鋼材で全ての需要が賄えるのかという司会者の質問に対しては「現在の電炉の供給能力で全てが賄えるわけではないが、鉄筋用の異形棒鋼はほぼ全てが電炉材だ。形鋼や鋼板はまだ電炉比率が低い。ただ、高い製造技術を求められる鋼板などの分野に挑戦していかなくてはリサイクル鋼材の普及拡大は図れない。この点で当社は先進的だと自負している。形鋼や鋼板で電炉シェアを拡大していき、2050年に向けては技術革新を着実に実施して電炉材への置き換えを進めていきたい」と強調した。

 スズトクHDの鈴木会長は今回パネリストとして参加した理由について「都市鉱山で東京五輪のメダルをつくる小型家電リサイクルのプロジェクトに参加しているためだ」と説明。「再生金属でメダルを造るのは五輪大会史上でも初めてであり、日本の循環型社会がそこまでできるという象徴になるだろう」と語った。

 ただ、プロジェクトの仕組みに関しては「負担は総額で数億円になる。最初に説明が一切なく、まずは見積もりを出してくれと言われ、採用段階の最後にコストは全て負担するよう言われた。最大の問題は情報の非公開性であり、秘密主義だ。ここは打破する必要がある」と苦言を呈した。

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