【共英製鋼、目指せ100年企業】〈創業70年の軌跡と展望〉(3)国内鉄鋼事業(枚方事業所)品質・コスト競争力に磨き

 枚方事業所(大阪府枚方市、事業所長・鳴海修取締役執行役員)は、京阪電車・枚方市駅から車で10分ほどの枚方市中宮大池にある。周囲は郊外住宅が増えている。

 工場は、平日の昼間は静かだ。生産量と電力料金を勘案して2002年10月から、平日夜間操業と土休日連続操業に切り替えた。

 D10ミリ~D16ミリの異形棒鋼を主力に、丸鋼、構造用鋼を合わせ年間約30万トン生産している。半製品の外販用ビレットも約2万トン生産している。昨2016年3月末に閉鎖したビレット製造の大阪工場(旧佃工場)の顧客を引き継いでいる。

 異形棒鋼の出荷先は関西地区一円。時には名古屋事業所や山口事業所と連携して中京地区や四国地区にも出荷する。

 共英は異形棒鋼で全国シェア1位。枚方は関西における拠点。関西市場では共英・枚方のほか、岸和田製鋼(大阪府岸和田市)、中山鋼業(大阪市西淀川区)と、岡山・倉敷のJFE条鋼の4社が異形棒鋼を供給している。需要量は月間9万トン強。4社の供給量で需給バランスがある程度保たれているが、北陸などからの流入玉もあって競争は厳しい。その中で枚方は、品質競争力や納期対応力、コスト競争力に磨きをかけてきた。

 「枚方の鉄筋(異形棒鋼)は直進性に優れ、高品質で加工しやすい。納期もしっかりしている」と鉄筋加工業者など需要家から定評がある。マンション、病院、学校、ホテルなど人が生活する建物は、頑丈でしかも居住音が響きにくい鉄筋コンクリート造が多い。鉄筋は建築現場で組み立てられコンクリートを打って柱梁になるが、その前工程として鉄筋加工業者によって切断・曲げ加工される。特に枚方が生産するD10ミリやD13ミリなど細物サイズは、ほとんどが曲げ加工され、さらに溶接されて使われる。このため、曲げ加工時の「折れ・割れ」が発生しないことや高い溶接性が求められる。

 枚方ではこうした要求に応えるため、製鋼・圧延の全工程で徹底した品質管理を行っている。

「折れ・割れ対策」としては製鋼工程での低カーボン化を図った。低カーボンだと強度が落ちるが、マンガンなどの合金鉄を工夫して強度を確保。圧延でも「スリット無し二本同時圧延」で製品の外観性やねじれ・曲がりの少ない直線性を確保した。

 コスト対策では2006年9月に、製鋼工場と圧延工場を隔てる市道の地下にトンネルを通し、製鋼ビレットを圧延工場に直送するラインを設置。直送圧延(DR)を開始した。それ以前はトラックでビレットを運び、圧延加熱炉で再加熱していたが、DR化で加熱炉の燃焼コストが大幅に減った。

 15年には電気炉にCo-Jetバーナー(酸素高圧吹込装置)を設置した。同バーナーの導入で電極の消耗が減り、エネルギーロスも低減した。安定的な吹込みで溶鋼の脱炭を円滑にし、鋼の品質安定を維持。同時に炉前作業の自動化に取り組み、安全化を進めている。

 枚方事業所は1972年10月に、共英製鋼にとって初めての電炉製鋼圧延一貫工場として稼働を開始した。「45年経過し、設備はほぼすべて更新されている。また山口事業所で開発した製品オンライン検査システムなど新技術も導入済み。競争力の高い工場になっている」と鳴海事業所長は胸を張る。当面の目標は「しっかり利益を出し、全従業員がさらにいきいきと、誇りを持てるようにしていきたい」。

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