今季のセMVPは記者泣かせ 票が割れるのは確実、広島・丸が最有力か?

セ・パ両リーグともにペナントレースは広島、ソフトバンクがマジック「1」となり、そろそろMVPが気になるところ。今季は誰が獲得するだろうか? ここではセ・リーグを予想してみたい。

広島・丸佳浩【写真:荒川祐史】

昨季のセは広島・新井が受賞、今季のMVPは誰の手に?

 セ・パ両リーグともにペナントレースは広島、ソフトバンクがマジック「1」となり、そろそろMVPが気になるところ。今季は誰が獲得するだろうか? ここではセ・リーグを予想してみたい。

 セ・リーグの昨年のMVPは、投票権を持つ記者の票が割れたが優勝チームの広島・新井貴浩が選出された。新井は19本塁打、101打点、打率3割。タイトルには手が届かなかったが、前年に阪神から広島に復帰し、39歳でチームを引っ張った功績が評価された形だ。 

 昨年はDeNAの筒香嘉智が本塁打、打点の2冠王。打者では最強だったが、3位のチームからのMVPはよほど抜群の成績を上げないと難しい。広島は中心選手がチームを引っ張るのではなく、レベルの高い複数の選手の総合力で勝つチームだ。MVPを1人選ぶのが難しい。まさに記者泣かせだが、今年もその傾向がある。

 今季の成績から、今年のMVP候補をピックアップしよう。

【打者の各部門3傑】
〇安打数
1.丸佳浩(広)161、2.ロペス(De)、田中広輔(広)155
〇本塁打
1.ゲレーロ(中)33、2.バレンティン(ヤ)29、3.ロペス(De)、エルドレッド(広)27
〇打点
1.ロペス(De)94、2.鈴木誠也(広)90、3.丸佳浩(広)88
〇盗塁
1.田中広輔(広)32、2.大島洋平(中)23、3.京田陽太(中)21
打率:
1.マギー(巨).321、2.宮埼敏郎(De).316、3.大島洋平(中).313

 各部門に多彩な顔ぶれが名を連ねている。広島で名前が挙がっているのが丸、田中、エルドレッド、鈴木。鈴木誠也は26本塁打90打点、打率.300と大活躍だったが、8月23日に足を負傷し、登録抹消されている。MVPは厳しいところだ。

 安打、長打、四死球、盗塁、犠打、犠飛を加味した打者の総合的な指標であるRCでは以下の通り。

1.丸佳浩(広)109.49、2.田中広輔(広)96.04、3.筒香嘉智(De)95.74

 丸と田中はフル出場している。丸は傑出した数字は残していないが、トータルでの貢献度が非常に高い。これをどう評価するかだろう。

先発&救援投手で際立った成績を残しているのは?

【先発投手の各部門3傑】
〇勝利数
1.菅野智之(巨)15勝、2.薮田和樹(広)14勝、3.マイコラス(巨)13勝
〇奪三振数
1.マイコラス(巨)169、2.菅野智之(巨)161、3.メッセンジャー(神)147
〇防御率
1.菅野智之(巨)1.72、2.マイコラス(巨)2.15、3.メッセンジャー(神)2.46

 この数字だけを見ていると、巨人が優勝チームではないかと思えてくる。広島は薮田が14勝、岡田明丈が12勝、野村祐輔、大瀬良大地、九里亜蓮が各9勝。エース頼みではなくレベルの高い先発陣で勝ってきたのだ。

 では救援投手はどうか。

【救援投手の各部門3傑】
〇セーブ数
1.ドリス(神)34、2.田島慎二(中)32、3.カミネロ(巨)25
〇ホールド数
1.桑原謙太朗(神)37、2.マテオ(神)34、3.ジャクソン(広)、三上朋也(De)27

 救援投手だけなら、阪神が優勝したかと思える。広島はシーズン中に中崎翔太と今村猛がクローザーとセットアッパーのポジションで入れ替わったために今村が23セーブ17ホールド、中崎が7セーブ25ホールドと数字が割れてしまった。チームへの貢献度は高いが印象度は低くなる。

(リーグ平均防御率-投手の防御率)×投球回で算出される投手の総合指標PR(PitchingRun)で見ると以下の通りになる。

1.菅野智之(巨)339.50、2.マイコラス(巨)258.20、3.メッセンジャー(神)170.97

 広島の1位は中崎の113.23、投手のMVP候補を広島から見つけるのは難しいだろう。

 打者では広島の丸、投手は現時点では巨人の菅野が最有力と言える。丸はMLBでいえばマイク・トラウトのような選手だ。打撃各部門のレベルが高く、足も速い。出塁率が高く、守備も優秀で総合的な評価が高い。トラウトは6年のキャリアで打点王を1度取っただけだが、MVPを2度受賞している。

 しかし日本ではそうした指標よりもタイトルが重要視される。丸が最多安打に加えて打点王のタイトルを取れば有利だろうが、そうでなければ票が割れるのは確実だろう。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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