多摩川氾濫の歴史語る 川崎、「アミガサ事件」103年で講演会

 多摩川の氾濫から地域を守る堤防建設を求め、現在の川崎市中原区周辺の住民らが1914(大正3)年、県庁に陳情に押し掛けた「アミガサ事件」から103年に当たる16日、同区上平間の上平間第三町会会館で、事件を振り返る記念講演会が開かれた。地元でもあまり知られていない歴史に約40人が耳を傾けた。

 住民数百人が編みがさをかぶって陳情したことが事件名の由来。地元出身で国土交通省国土技術政策総合研究所主任指導官の和田一範さんが、「有吉堤竣工百年〜アミガサ事件の背景を考察する」と題し、当時の文書を基に解説した。

 和田さんは、事件の約1カ月後に作成された内務大臣大隈重信宛ての陳情書を紹介。堤防のない一帯が毎年のように洪水に悩まされる原因について当時の住民は、対岸の東京側にある高い堤防、下流に架かる橋、河川敷に密集するナシの木の存在と、砂利採取による川の流れの変化と考えていたことを明らかにした。

 事件の約2年後、現在のガス橋近くに約2・2キロにわたる堤防が完成し、建設に尽力した当時の有吉忠一知事の名前が付けられた。和田さんは「堤防を巡る一連の動きは、住民の結束と連携で地域の防災力を高めた事例として現在の参考にもなる」と話した。

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