【ニュースの周辺】〈新日鉄住金のチタン生産・2拠点体制で安定供給〉燃料タンクや構造部材など自動車向け需要拡大に期待

 新日鉄住金がチタン事業で国内製造業向けの需要拡大を見据えた対応を強化している。特に注力するのが自動車向け。これまで自動車向けのチタンと言えばマフラー用途が中心だったが、ここ数年の営業強化の取り組みが奏功し、徐々に他の部品にも適用が広がり始めている。

 マフラー以外の新しい用途では二輪車の燃料タンクが好例だ。新日鉄住金が16年にホンダから受注し、量産二輪車の燃料タンク素材としては世界で初めてチタン(冷延薄板)が使われた。従来素材の樹脂より軽量化できるうえ、優れたプレス成形性も評価された。

 チタンは強度が高いため、樹脂など他素材に比べ部品に加工しづらいと思われがち。だが、この採用をきっかけに「プレス成形性にも優れているという認識が浸透し始めた」(新日鉄住金幹部)。チタンの優れた材料特性に理解が進めば、四輪車の構造部材などさらに新しい用途を掘り起こせる可能性もありそうだ。

 日本チタン協会によると、16年度のチタン展伸材の国内出荷(1万6976トン)のうち自動車用途は約5%の878トンと限定的。ただ、12年度(271トン)以降、4年連続で前年度実績を上回っており自動車用途の需要は着実に伸びている。チタンは海水に対する耐食性が極めて高いため、現状では船舶搭載用のプレート式熱交換器(PHE)や発電所の復水器など海水に接する用途が圧倒的に多い。

 海水耐食性や比重が鉄の6割という軽さはもちろん、優れた強度や美麗で多彩な外観を表現できる高い意匠性などチタンの材料特性は様々。「ただ、その利点が国内製造業に十分浸透しているとは言い難い」(関係者)。裏返せば潜在需要を開拓する余地は十分に残されている。

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