金属行人(9月26日付)

 最近のメディアを見ていると、改めて「引き際」を考えさせられる▼今年4月、女子フィギュアスケートの浅田真央選手が引退を表明。5月には女子ゴルフ界をリードしてきた宮里藍選手が現役引退を発表し、今月最後の試合を終えた。歌手の安室奈美恵さんの引退発表も記憶に新しい▼世間から見れば「なぜ、今なのか。まだ若いのに」との意見もありそう。ただ第一線で活躍したからこそ、自身のパフォーマンスに納得できなくなった上での決断というのであれば、外野がとやかく言うことではないのかもしれない▼事業承継問題や商流変化の影響などで、かつて老舗と言われた鋼材特約店の廃業が全国各地で目に付くようになった。長年続けた商売をやめるという決断は本当に難しいと思う。また、収益性の乏しい事業から撤退する「引き際」の見極めは経営者の才覚と手腕が問われる▼国会では降ってわいたような〝解散風〟が吹き荒れている。政界引退を表明したベテラン議員がいる一方、不祥事やスキャンダルを物ともせず、無所属で次期総選挙に出馬しようというたくましい先生方も。周囲からは「引き際」を知らない「往生際」の悪い方々と見られるかもしれないが…。

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