年末調整の「保険料控除ハガキ」の見方は?紛失時はどうする?

年末調整の時期に送られてくる保険料控除証明書のハガキ。保険料が2つ書いてあり、迷ってしまうこともあるでしょう。保険料控除証明書の見方について解説します。

年末調整に必要な保険料控除のハガキには何が書いてある?

年末調整の時期が近づいてくると送られてくる保険料控除のハガキ(保険料控除証明書)。単に保険料控除といっても生命保険料控除(3種類)や地震保険料控除、社会保険料控除などさまざまです。

毎年当たり前のように年末調整をしていると思いますが、保険料控除のハガキをじっくり見るのはたいてい年に1回だけでしょう。記載されている保険料の金額の意味など、結構知らないことがあるものです。そこで、年末調整の保険料控除ハガキの見方についてお話ししたいと思います。

年末調整の保険料控除とは?

年末調整(確定申告も同様)の保険料控除とは、その年(1/1~12/31)支払いをした生命保険料や地震保険料、あるいは健康保険・国民年金保険料などの金額によって所得税が安くなるというもので、所得控除の一つです。

保険料「控除」ですから、支払った保険料分を「差し引く」ことができます。差し引くことができる分だけ所得(要するにその人の儲け)が減りますから、儲けが減る分だけ支払う所得税も安く済むということです。

通常、会社員なら、社会保険料控除(健康保険や厚生年金など)については給与天引きされたものは勤務先で一括して計算します。

申告が必要なのは、勤務先で支払い保険料を把握することのできない(新規の加入や解約など)各種生命保険料控除や地震保険料控除などということになります。

また、例えば会社を転職・退職して、その間に自分で国民健康保険料や国民年金保険料を支払った場合、勤務先ではこの支払い分について把握することができません。社会保険料控除でも、こうしたものは自分で書類に記入します。

年末調整・保険料控除のハガキには2種類の金額が書いてある

保険料控除のハガキを見ると、生命保険料控除や地震保険料控除、社会保険料控除いずれも2つの数字が記載されています。例えば月払いの場合、一つは「証明額」、もう一つは「申告額」や「ご参考」などというような表記になっています(表記方法が異なる場合があることはご留意ください)。

画像の生命保険料控除証明書の見本を見てください。

生命保険料控除証明書の見本

最初にお話ししたように、保険料控除は「今年支払った保険料」に対して控除があります。一方、自分の手元にこのハガキが届くのは10月上旬頃です。つまり一般的に月払いで支払いが確定しているのは9月分くらいまでです。

その年の残りの支払いがすべて完了していない段階でこの証明書が発行されます。ですから、証明書が発行された時点で納付が確定している金額と、実際に今年支払うであろう金額(申告する金額)の2つが記載されているのです。

「書類にはどっちの金額を書けばいいの?」と思う人も多いでしょうが、今年支払うであろう申告額を使います。仮に保険料が月払いであればその12カ月分ということになります。

ただし、生命保険などの更新で保険料が変わる場合や解約をした場合、年間の支払い保険料が変わります。いずれにしても実際に自分で負担した金額を記載すればいいと覚えておいてください。

共済(JA共済、こくみん共済coop(全労済)、県民共済)の年末調整ハガキ

年末調整のハガキというと生命保険や損害保険をイメージしがちですが、共済でも該当契約は保険料控除の対象です。

・JA共済

・こくみん共済coop(全労済)

・県民共済

・コープ共済 など

これらは比較的メジャーな共済組織ですが、基本的な保険料控除の仕組みは保険と一緒です。例えばJA共済でも年末調整のハガキは毎年10月上旬頃に届きます。共済では保険料という言葉は使わずに「掛金」といいますが、保険料控除は使えます。保険では「保険料控除証明書」ですが、共済では「共済掛金証明書」という名称のハガキが届きます。

名称が異なりますが同じ意味だと考えてください。保険料控除にもいくつか種類がありますが、共済でも該当する控除を適用することができます。控除の種類は次のとおりです。

・生命保険関係:一般の生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除

・損害保険関係:地震保険料控除

共済では損保の地震保険は加入できませんが、共済独自の地震に対する保障があります。地震部分についての掛金が地震保険料控除の対象です。なおJA共済の場合、損保関係では平成18年12月31日以前に締結した建物更生共済の契約(契約期間が10年以上の満期返戻金のある契約)は旧長期損害保険料控除の経過措置が使えます。

地震保険料控除ができる改正前の制度の経過措置で、損保では同じ時期の契約の損保年金くらいでほとんど残っていません。積立タイプの火災共済を取り扱うJA共済ならではですが、該当する人は満期までは年末調整で制度が利用できます。

保険料控除のハガキを紛失したら再発行してもらえる?

保険料控除ハガキは再発行が可能です。ハガキが来ていたはずだが紛失したというのは珍しいことではありません。

会社員の人は勤務先から年末調整関係の書類の提出期日を決められているでしょうから、間に合うように保険会社などに再発行を依頼しましょう。勤務先への提出期限ぎりぎりになってから再発行を依頼すると慌てることになりますから、余裕をもって手配するようにしてください。

なお、保険料控除は冒頭でお話ししたように「一定の金額を所得(儲け)から差し引くことができる」というものです。

例えば一般の生命保険料控除であれば最高4万円が3種類の控除で計12万円(平成23年12月31日以前の契約なら最高5万円が2種類で計10万円)を控除(差し引く)することができます。

加入している保険の種類(生命保険、医療保険、がん保険、個人年金保険など)と時期で保険料控除の金額の上限が異なります。

「差し引かれた分、税金の計算の元となる所得が減る」というものですから、「保険料控除(差し引くことのできる金額)分がそのまま返金される」という制度ではありません。間違えないようにしましょう。

保険料控除証明書の電子的交付とは?

年末調整で使う各種保険料控除証明書は、保険会社からハガキが郵送されるというのは一般的な認識でしょう。確定申告などはe-TAXなどで電子化が進みつつありますが、保険料控除証明書も同様に電子化が進められています。

すでに平成30年分以後においては、保険会社等からハガキではなく電子交付された電子的控除証明書等(電子発行された保険料控除証明書のこと)を確定申告の際にe-TAXで添付できるようになっています。

さらに令和2年10月以後、年末調整において給与支払い者に電子的控除証明書等を添付して提出することができるようになる予定です。このように保険料控除証明書も電子化の動きが加速しています。国税庁のサイトにも適宜情報が更新されるでしょうから確認しておきましょう。

各保険会社も情報を掲載しているので、「電子的控除証明書等+加入先の保険会社名」などで検索するとたいてい該当ページが用意されていますから参考にしてください。

(文:平野 敦之(マネーガイド))

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