「船の先生」引退 横浜、日本郵船歴史博物館

 日本郵船歴史博物館(横浜市中区)の館長代理、脇屋伯英さん(70)が引退することになり、27日に最後の館内案内を行った。豪華客船「飛鳥」「飛鳥2」の機関長という経験があり、船の役割や歴史をユーモアあふれる語り口で紹介し、人気を博してきた。

 「海のない土地に育ち、世界を巡る船乗りに憧れました」。1947年、奈良県大和高田市生まれ。神戸商船大学(現在の神戸大学)に進学し、71年に日本郵船入社。機関士としてさまざまな貨物船に乗船した。

 マニラでフィリピン人船員教育などの陸上勤務も経験した後、95年から初代飛鳥の機関長に就任。2006年に就航した飛鳥2に10年4月まで乗船し、機関長職を勤め上げた。

 同館での勤務は翌年10月から。2人いる館長代理の一方を担う。約20人のスタッフのうち、唯一の海上職OBとあって、一般客やグループ会社の新入社員らへの館内案内を一手に引き受けている。解説書やパネルには書かれていない船乗りならではのエピソードを入れて、軽妙な語り口で説明し、多くの人たちの関心を引きつけてきた。

 「エンジンの人(機関士)は無口な人が多いのですが…」というが、もともと歴史が好きで、母校で助手をした経験からしゃべるこつをつかんだという。

 日本郵船の企業博物館だが、日本の近代海運の歴史を系統立てて資料を集めてきた。特に子どもたちに活用してほしいと願い、船の質問には脇屋さんが実際に船で働いた経験を生かし、できる範囲で答えてきた。

 退職に際し、スタッフに伝えた言葉がある。「日本は海に囲まれた国で、海運なくして成り立たない。引き続き、海運に興味を持っていただけるお手伝いができる博物館であってほしい」

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