混迷の決戦、火ぶた

 衆院が解散した28日、国会は小池百合子東京都知事が率いる新党「希望の党」の話題で持ちきりとなった。自民、公明の与党は「挑戦を受けて立つ」と対決姿勢を鮮明にし、新党への合流方針を決めた民進党は「前原誠司代表の決断を尊重する」とひとまず結束。日増しに攻勢を強める希望の議員は「政権交代を目指す」とボルテージを上げた。★「大事なのは政策実行」与党 県内の与党議員は、希望への警戒心をのぞかせつつも、準備期間が1カ月に満たない短期決戦に向けて戦闘モードに入った。

 「これだけ混迷した世界情勢で、これからの日本を動かしていけるのはどこなのか。もう一度、選んでもらえるように訴えていく」 自民党筆頭副幹事長の小泉進次郎氏(衆院11区)は国会内で記者団にそう語り、表情を引き締めた。

 民進が希望との事実上の合流を表明したことに「分かりにくい勝負は国民にとって不幸」と指摘。「がっぷり四つに組んで、どちらが夢と希望を与えられるか。小池さんが出馬してくるのをびくびくしていたら終わり。むしろ出ていただいて論争していく方がいい」と求めた。

 一方、菅義偉官房長官(同2区)は「大事なのは党の組み合わせではなく、どんな政策を掲げて実行するかだ。国民が関心を持って判断する」とけん制。公明党の上田勇氏(同6区)も「政策や基本的スタンスがバラバラの人たちが一緒になるわけで、果たして責任ある政党として評価できるのか」と疑問を呈した。★自民1次公認4区に山本氏浅尾氏は入党 自民党は28日、衆院選の第1次公認候補を発表し、県内は6区を除く17人を公認した。

 公認争いが行われていた4区(横浜市栄区、鎌倉・逗子市、三浦郡)は、前回と同じ山本朋広防衛副大臣(比例南関東)を公認。これに対し、前回無所属で出馬し小選挙区を制した浅尾慶一郎氏は「4区で自分が自民党候補として戦えると思っている」と述べた。

 浅尾氏は27日に党本部に入党届を提出し、認められた。自民県連は「言語道断」と抗議。4区で推薦したり、比例南関東の名簿に登載したりしないよう求める。

 4区を除く県内の1次公認は次の通り。(いずれも前職、敬称略) ▽1区 松本純▽2区 菅義偉▽3区 小此木八郎▽5区 坂井学▽7区 鈴木馨祐▽8区 三谷英弘▽9区 中山展宏▽10区 田中和徳▽11区 小泉進次郎▽12区 星野剛士▽13区 甘利明▽14区 赤間二郎▽15区 河野太郎▽16区 義家弘介▽17区 牧島かれん▽18区 山際大志郎★希望と合流、心中複雑民進 衆院解散直後に開かれた民進党両院議員総会で、希望の党との合流方針が決まった。県内の民進議員も「政権選択選挙にすべき」「前原代表が大局的な見地から決めた」と受け入れたが、あまりに急展開で先が見通せないとあって心中は複雑。「手続きが非民主的」という批判や、「自分は公認されるのか」という不安の声も漏れた 県連代表の本村賢太郎氏(衆院比例南関東)は「所属議員が生き残り、非自民の枠組みをつくった」と前原代表に感謝。「政界再編」を掲げてきた江田憲司氏(同8区)も「大局的見地から前原代表が判断されたこと」と理解を示し、希望については「しがらみのない政治や身を切る改革など旧みんなの党の原点に近く、違和感はない」と評価した。

 青柳陽一郎氏(同比例南関東)は「このままでは野党候補が乱立し、自民党を利するだけの構図から抜け出せないままだった」とし「政権選択選挙となり得る」。希望に公認申請すると明言した。

 ただ、希望が申請者全員に公認を与えるかは不透明だ。代表の小池知事は安全保障政策の一致を選別の基準にする意向を示している。水戸将史氏(同)は申請を明言しながら「公認されることを願っている」と不安をのぞかせた。

 唐突な提案に反発する声も。先の党代表選で前原氏の推薦人に名を連ねた阿部知子氏(同)は総会後、「手法が乱暴すぎる。国民の理解を得られるのか」と不満を訴えた。一方で「どんな手段を使っても安倍政権を止める」という前原代表の意図には理解を示し、自身の対応について「希望でやるかどうか、まだ決めていない。支持者や地元の議員とも話して考えたい」と述べた。★「政権交代目指す」希望 政権交代を目指す−。「希望の党」結党メンバーの県内国会議員4人は28日、新党を取り巻くうねりの大きさに驚き、高揚しながら「新しい政治の流れを巻き起こす」と意気込んだ。

 15日に民進党に離党届を提出した後藤祐一氏(衆院16区)は「離党時点では(反自民の)受け皿をつくるつもりだったが、国民は非自民の政権を求めている。見立てが甘かったかも」。松沢成文参院議員(神奈川選挙区)も「まず健全な第三極をつくろうと思ったが、大きな器をつくって政権交代を目指す」と、そろって目標を“上方修正”した。

 だが、果たして新党は信頼に足るのか。笠浩史氏(衆院9区)は懐疑的な声を意識して「来週にも発表する基本政策(公約)が大事」と強調し、「本当の意味で政権交代の選択肢になるようにしなければ」と述べた。30年以上在籍した自民党を離党した福田峰之氏(同比例南関東)は「自民党(所属)ではない選挙は初めて。後悔はない。青くさくやる」とすがすがしい表情だった。★「3法阻止へ頑張る」共産 共産党の畑野君枝氏(衆院比例南関東)は28日、衆院解散を受け「憲法違反の特定秘密保護法と安保法、改正組織犯罪処罰法を廃止させるために頑張る」と述べた。

 希望の党が誕生し、自身が立候補予定の10区も含め野党候補の一本化は厳しい情勢だが「安保法制や改憲を認める保守政党とは一緒にやれない。市民にとって分かりやすくなった」と前向きに受け止めた。

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