富士ボルト製作所、岡部が買収 鉄筋継手のシェア拡大、東南アジアに進出

 総合建材メーカー、岡部(社長・廣渡眞氏)は機械式鉄筋継手大手の富士ボルト製作所(本社・東京都江東区、社長・山崎富士夫氏)を買収した。富士ボルト製作所の全株式を取得し完全子会社化したもので、買収金額は非公表。鉄筋継手のシェア拡大を図るとともに、富士ボルト製作所のインドネシア拠点を活用して東南アジアへ進出する。富士ボルト製作所の直近(2016年2月期)の売上高は25億円で、岡部では早期に売上げを倍増させたい考え。

 富士ボルト製作所は1952年に創業。従業員は海外を含め約130人で機械式継手の製造・販売を手掛ける。国内に白井工場(千葉県白井市)、美浦工場(茨城県稲敷郡)の2製造拠点、海外はインドネシアに60%出資するフジボルトインドネシアを有する。

 フジボルトインドネシアは日本のJISや評定、ISOを保有し、継手のスリーブ(鋼管)をインドネシアで製造。白井、美浦や全国の提携メーカーで圧着するという生産体制を敷いていた。さらに耐震補強工事などを行う100%子会社、富士機材を展開している。

 今後、富士ボルト製作所が展開していた「FDグリップ継手」を岡部の戦略製品と位置付け、土木分野における一つの核としていく方針。また、海外ではフジボルトインドネシアを東南アジア進出の足掛かりとして、グローバルメーカーへの進化に向けた大きな一手としていく。

 富士ボルト製作所の社長は引き続き山崎氏が務め、岡部からは会長に元井彰常務取締役、副社長に青木雄一国際部部長代理、専務に川島豊経理財務グループ部長代理が就任する。

解説

 岡部は19年までの中期3カ年経営計画「NEXT100」で、建設関連製品事業や自動車関連製品事業など「コア事業への経営資源の集中」を掲げている。M&Aを当該領域で行うと明言しており、今回の買収はこの方針に沿ったものだ。

 富士ボルト製作所は太径の機械式鉄筋継手で高いシェアを有し、主力の「FDグリップ継手」は経済性・作業性に優れ、多くの大型案件でも使用されるなど高い技術力には定評がある。

 岡部は機械式鉄筋継手「C・Sバー」や「C・Sジョイント工法」を展開しているが、現場ヤードでの圧着が必要で、職人など人手不足から省力化が求められる昨今は厳しい販売環境にあった。「FDグリップ継手」はあらかじめ圧着されているため、現場作業の省力化を実現するなど時代のニーズに合致した製品。

 今後、岡部の全国の販売網を活用してさらなる拡販が可能となり、製品力の補完によってシェア拡大を図る。さらに耐震補強工事を行う富士機材を活用し、耐震補強分野も強化していく。

 また、岡部は北米やイタリア、中国にグループ会社を有するが、東南アジアには拠点がなかった。今回の買収により、フジボルトインドネシアを足掛かりに東南アジア市場へ進出し、岡部の製品の製造・販売も行っていく方針だ。

 富士夫氏の息子でフジボルトインドネシアを立ち上げた隆一郎氏は海外経験も豊富で、インドネシアの社長として現地の売上げ強化を図るべく敏腕を振るう。

 岡部の「安全・安心の提供を通じて社会に貢献する」という経営理念は、富士ボルト製作所の「世の中に安心・安全な空間を提供する」という経営理念と重なる。こうした理念や文化の相似が今回の買収成立につながったと言えよう。

 子会社化後も富士ボルト製作所の社長は山崎氏がそのまま務め、社名も踏襲することは岡部の期待の表れで、富士ボルト製作所のブランド力を生かしていく。

 社員も子会社を含めた全員がそのまま雇用され、高い技術力をフル活用して日本のみならず世界の安全・安心に貢献していく構えだ。(村上 倫)

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