温かい飲み物は体にいい? 熱すぎるとがんの危険因子に

熱い飲み物を飲むと、あるがんを発病するリスクが上がるのだとか。どういったことに注意すべきなのでしょうか?

熱い飲み物が食道がんのリスクを上げる?

身体を冷やすのはよくない、できれば飲み物は、常温か温かい状態で飲むべき、という話は、健康でも美容でもよく目にするものだと思います。

一方で、「熱い飲み物で食道がんになりやすくなる」という話を聞いたことがある人も多いかもしれません。これはどの程度本当の情報で、どれくらいの熱さのものを指すのでしょうか? 国際がん研究機関(IARC)は、2016年、「非常に高い温度で摂取される飲み物」を食道がんの推定原因として分類しました。

1991年に「発がん性がおそらくある」と分類されていたコーヒーとマテ茶については、飲み物それ自体にがんを引き起こすという証拠は見つからなかったと報告されています。

この報告によると、「65℃以上の温度で飲み物を飲むことが食道がんにつながる可能性があり、コーヒーやマテ茶などの飲み物の種類は関係なく、重要な因子はその温度である」とのことです。

例えば、約70℃というかなりの熱さのお茶を飲む、中国、イラン、トルコ、南米では、がんのリスクが高く、60℃以下でお茶などを飲む欧州と北米ではがんのリスクが低いという様々な研究から示唆されています。

そもそも食道がんとは

食道とは、口から胃までの間にある管で、食物の通り道になる部分です。食道では、食べ物は通過するだけで、胃のように消化されることはありません。この食道にがんが発生するのが食道がんです。食道の粘膜から発生するため、がんの部分に違和感やしみる感が初期症状として見られます。

がんが進行すると、食道の周りにも影響が現れ、気管支への影響からは、咳、血の混じった痰、声がれ(嗄声/させい)などが見られ始めます。また、食道自体も内腔が狭くなるため、食べ物の通過が悪くなり、食べ物を詰まりやすくなったりします。

危険なのは熱い飲み物だけではない? 食道に悪い刺激物とは

2009年の日本の研究報告(Ishiguro S他 Cancer letter)によると、飲酒については、アルコールを飲まないグループに比べると、1日当たり日本酒にして1合以上飲むグループから食道がんリスクが上がり、1合から2合のグループで2.6倍、2合以上のグループで4.6倍高くなると報告されています。

日本酒1合と同じアルコール量を他のアルコール飲料で換算すると、焼酎なら0.6合、泡盛で0.5合、ビールで大ビン1本、ワインでグラス2杯(240ml)、ウイスキーではダブルで1杯になります。

逆に言えば、日本酒1合までなら、食道がんの危険性は少ないのです(もちろん、飲酒をしない方がよりよいとも言えますが……)。

また、アルコールですぐに顔が赤くなる人も食道がんの危険性が高くなると言われているため、無理に飲酒を続けるのは避けた方がよいでしょう。

タバコと食道がんの関係は?

喫煙についても高いリスクがあります。非喫煙者に比べ、現在も喫煙している人は平均3.7倍も食道がんの危険性が高くなるのです。過去に喫煙していて、今は止めている場合でも、3.3倍高くなることが報告されています。

しかも、喫煙の本数と期間によって決まる「喫煙指数」が高くなるほど、食道がんの危険性が高くなり、喫煙係数が20未満で2.1倍、20~29で2.7倍、30~39で3.0倍、40以上で4.8倍になります。つまり、熱いもの以上に、喫煙自体が食道がんのリスクになるのです。

リスクを下げる方法は? 食道がんの予防法

野菜や果物を十分に食べていれば、食道がんの危険性が下がることが報告されています。2007年の日本の報告(Yamaji T他 Inter J Cancer)では、野菜・果物の摂取量に応じて3つのグループに分けて調査した結果、野菜・果物の高摂取グループでは、低摂取グループに比べ食道がんのリスクがほぼ半減していたと報告しています。さらに、野菜・果物の合計摂取量が1日あたり100グラム増加すると、食道がんのリスクが約10%低下したとのことです。

これらをまとめると、野菜や果物をあまり食べずに、70℃以上の熱燗にした日本酒を1合以上飲む喫煙者は、食道がんリスクが相当高くなると考えられます。当てはまるものが多い人は生活習慣を見直すなどして、上手に健康管理をしていきましょう。

(文:清益 功浩)

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