Qoly恒例のプレイバック企画!今回は2015年10月4日公開、「バルセロナはどうなる?世界の"越境"チームたちを知る」を改めてご紹介しよう。
本日2017年10月1日、スペイン・カタルーニャ地方で独立を問う住民投票が行われているが、これを認めていないスペイン中央政府は一部の投票所を封鎖。強行する住民らとの間で衝突が起きており負傷者も出ている。
仮に独立が決まればバスクなど他の地域でも独立運動の機運が高まる可能性があり、バルセロナを筆頭に複数の強豪クラブがリーガを脱退する可能性もあるだけに、スペインとしては頭の痛いところだろう。
ただ世界には他国のリーグへ越境して参加しているチームも少なくない。バルセロナらが今後もリーガで戦うことを踏まえて、今回は“越境チーム”を紹介しよう。
ウェールズinイングランド (例:スウォンジー・シティ)
イギリス連邦の1つウェールズは1992年より国内リーグ(ウェルシュ・プレミアリーグ)を持つが、6チームが参加を拒否しイングランドで切磋琢磨している。
かつては代表格と言えばカーディフ・シティだったが、近年はスウォンジー・シティが2011年に初めてプレミア・リーグへ昇格して以降安定した成績を残している。
上記は、2012年に100周年を迎えた際のスウォンジー・シティのクレスト。同シーズンのイングランド・リーグカップ優勝を果たしている。
それ以外では、ニューポート・カウンティ、レクサム、コルウィン・ベイ、マーサー・タウンが該当する。マーサー・タウンのようにほとんどがウェールズ人というチームもあれば、レクサムやニューポート・カウンティのようにイングランド人の方が在籍人数が多いチームも存在する。
国内リーグ発足以降、関係性が断絶していた6チームだが、1997-98シーズンにFAWプレミアカップという国内リーグと越境チームが戦うカップ戦が発足、2007-08シーズンまで実施された。
2011-12シーズンに、国内リーグのカップ戦であるウェルシュ・カップに限り「越境チーム」の復帰が認められた。実際に、3チームがカップ戦に参加をしたが、1年限りのトライに終わっている。
サンマリノinイタリア (例:サンマリノ・カルチョ)
十和田湖と同じ国土面積しかない周囲をイタリアへ囲まれたミニ国家。サンマリノ代表は欧州でも屈指の弱小国でこれまで公式戦1勝(対戦相手はリヒテンシュタイン)しかあげていない。
かつて同国の絶対的エースストライカーだったアンディ・セルヴァはサッスオーロ、SPALなどイタリアでプレーしていた。そのセリエに唯一越境しているのがサンマリノ・カルチョである。
現在イタリア5部相当でプレーするサンマリノ・カルチョだが、サンマリノ人はほとんど所属していない。
サンマリノ代表が多くプレーするのは国内リーグである。グループA、グループBに分かれ計15チームが参加、今季からは元イタリア代表MFダミアーノ・トンマージ(元ローマ)が現役復帰しラ・フィオリータに所属している。
トンマージは現在41歳、7月のヨーロッパリーグ予選ファドゥーツ戦ではチーム唯一の得点を決めた。過去には同国リーグで元ブラジル代表DFアウダイールもプレーするなど、引退選手がプチ復帰することも近年増えている。
リヒテンシュタインinスイス (例:ファドゥーツ)
サンマリノに唯一の勝ち点3を献上してしまったのがスイスに越境しているリヒテンシュタインである。
これまでのサンマリノ、ウェールズらの例と違いリヒテンシュタインには国内リーグがない。そのために、リヒテンシュタインのチームはスイスでリーグを戦っている。
主な主戦場は2部、3部相当のリーグだが、最も歴史を持つファドゥーツは1部に昇格する力がある同国最強のクラブチームだ。同チーム唯一のアジア人として北朝鮮代表FWパク・クァンリョンが在籍していたことがある。
ちなみに国内カップ戦、リヒテンシュタイン・カップは1946年から今日まで継続しており優勝チームはヨーロッパリーグに出場することができる。
スイス・リーグはかつて低迷していた時期、セリエAの有望な若手がレンタルに出されることが多かった。語弊を恐れずに言えばイタリアの弟分的な時期があり、さらにその下にリヒテンシュタインがあったという感じだろうか。
そのためかリヒテンシュタイン代表のエースストライカーであるマリオ・フリックもヴェローナなどイタリアでプレーしていた。
アンドラinスペイン (例:FCアンドラ)
1993年に独立した人口7万人のミニ国家。スペイン、フランスに外交のほとんどを委ねており、サッカーでもスペインのリーグに越境しているチームもある。
ちなみにスペイン内にもアンドラという地名がアラゴン州テルエル県にあり、アンドラCFというサッカーチームがある。これに対して、アンドラ公国のサッカーチームはFCアンドラである。両者は同じスペインのリーグに属しており、非常に間違えやすい。
左側がFCアンドラ、右側がアンドラCF。クレストで見れば一目瞭然なのだが…。
小さな国は守備機会が増える。そのためにゴールキーパーのコルド・アルバレスはUEFAジュビリーアウォーズに選出されており、DFのイルデフォンス・リマは主将&同国最多得点を記録している。代表選手は半数がスペインでプレーしており、残りはフランス、アンドラ国内でプレーする。
国内リーグ、プリメーラ・ディビシオは1部8チームと決して大きな規模ではないが、2部リーグとの昇降格もある。優勝チームは、チャンピオンズリーグの出場権を得る。
カナダinアメリカ (例:モントリオール・インパクト)
アメリカと関係性が深い同国だけに兼ねてから様々な体制の元で関わりがあった。まず、1970年代には北米サッカーリーグに参加していたが1984年のリーグ解体を受けてカナダ・サッカーリーグが誕生する。
しかし、現在同国のサッカーチームはアメリカのMLS、もしくは2部であるNASLに参加しており、国内リーグはアメリカ3部相当の位置づけとなっている。しかし、直接2部へ昇格する手立てはなく、どちらかというと若手が育成するためのリーグという認識になっている。
代表チームの1つモントリオール・インパクトには、深澤仁博(元アルビレックス新潟)や元イタリア代表DFアレッサンドロ・ネスタが在籍していた。
現在の顔と言えば、ご存じディディエ・ドログバだ。
カナダからは現在トロントFC、バンクーバー・ホワイトキャップス、FCエドモントン、オタワ・フューリーを含めた合計5チームがアメリカで戦っており、彼らは国内カップ戦であるカナディアン・チャンピオンシップでも顔を合わせている。
たった5チームのカップ戦であるためエドモントンとオタワが最初に1回戦を行い、勝者を含めた4チームで準決勝を行うという変則的なトーナメントになっている。勝者には、CONCACAFチャンピオンズリーグへの出場権が与えられる。
なお、過去にはバミューダ、プエルトリコのチームもアメリカの下部リーグへ参加していた。
ニュージーランドinオーストラリア (例:ウェリントン・フェニックス)
現在、大陸間を行き来するダイナミックなチームが地球上に1つある。それが、ニュージーランド唯一のプロクラブであるウェリントン・フェニックスである。
2007年に創設されて以降、オーストラリア1部・Aリーグで戦っているのだが、オーストラリアがAFCに移転したためOFCに所属するウェリントン・フェニックスはオセアニアからアジアへと"越境"している。そのために、Aリーグで上位の成績を収めてもAFCチャンピオンズリーグ出場権を獲得することはできない。
加えて2014-15シーズンからはリザーブチームがニュージーランド・フットボールチャンピオンシップでプレー、若手選手が経験を積んでいる。
現在、FC東京でプレーするネイザン・バーンズも7月まではウェリントン・フェニックスの一員だった。
モナコinフランス (例:モナコ)
世界で最も有名な越境例といえば、モナコだろう。F1のモナコGPでおなじみの世界で2番目のミニ国家である。
首都モナコ市が全領土であり、モナコはUEFAにもFIFAにも加盟していない。モナコ(正式名称ASモナコ)もフランスとモナコの5チームが合併したのがチームの起こりであり、最初からフランスのリーグでプレーしている。
2003-04シーズンにリュドヴィク・ジュリを擁しチャンピオンズリーグ決勝に進んだのがハイライトだろう。
タックス・ヘイヴンとしても知られ日本人で言えば、デューク更家、中田英寿などが住居を構えている。
こうしてみると国内リーグがある・なしに関わらずよりハイレベルの戦いを求めて越境しているケースが多い。
今回のバルセロナのケースでは、スペイン側は「リーグ参加を認めない」ことで、カタルーニャ独立をけん制している。より強い対戦相手があってこそ、自分たちの存在価値も高めていくことができるわけで今後の動きに注目していきたい。