金属行人(10月2日付)

 日本近海における海洋鉱物資源開発に向けて一歩前進した。経済産業省と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が先週、沖縄海域での海底熱水鉱床の連続揚鉱に世界で初めて成功したと発表した。コバルトリッチクラストやマンガン団塊など他の海洋鉱物資源開発にも転用が期待できる技術で、同分野で世界を一歩リードした形だ▼海底熱水鉱床は海底面から噴出する熱水から金属成分が沈殿してできた銅・鉛・亜鉛・金・銀などからなる多金属硫化鉱床。日本では沖縄と伊豆・小笠原の複数海域で賦存が確認されている。比較的近海かつ分布水深が浅く、金・銀の含有率が高いことから開発に有利と言われる海洋鉱物資源だ▼日本は鉱物資源の大部分を海外に依存するが、領海を含めた排他的経済水域は世界6位の広さを持ち、海底にはこうした海洋鉱物資源が豊富に眠る。その開発が可能となれば資源の新たな供給源ともなり得る▼一方で海洋鉱物資源は、生産技術やコストなどさまざまな課題があり、世界的にも商業化のめどは立っていない。今回の成果は海外でも報道されるなど国内外で注目を浴びているようだが、着実に一段ずつ階段を上っていってもらいたい。

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